光学シミュレーションベンダのOPTIS Japanは11月16日、都内で「自動運転時代の居心地いいキャビンを支えるADAS統合制御バーチャル開発 -モデルベース開発-」をテーマとしたユーザーカンファレンスを開催。併せて同社が2018年5月にANSYSによる買収が完了したことを踏まえ、今後のANSYSとOPTISの動向に関するメディア向け説明会を開催した。

OPTISは1989年に設立。以降、3次元光学解析ソフト「SPEOS」の提供を中心に、さまざまな製品開発の現場で活用されてきた。中でも日本市場は、自動車業界を中心として、同社のユーザーが多くいる重要な地域で、OPTIS単体で見た場合の売り上げの1/3以上(約35%)を占めているという。

ANSYSのOPTIS買収は、この数年の同社の自動運転の実現に向けた環境開発の整備の一環として行なわれたもの。これにより、構造解析、流体解析、エレクトロニクス、半導体、組み込みソフトウェアといったソリューションに光学解析ソリューションが追加され、従来以上に物理現象に関する最良のシミュレーションを実現できる環境の提供が可能となる。

OPTISの創設者で社長兼CEOのジャック・デラクール氏は、「(ANSYSの買収により)物理ベースのシミュレーションに対し、バーチャルの能力を提供することで、デザインプロセスの中心に人を配置することを可能とする没入感を提供することが可能となる。連携をさらに密にしていくことで、さらなる没入感を開発チームに提供することができるようになり、未来のプロダクトとコンタクトすることができるようになる」と今回の買収で起こる未来を予測。バーチャルの活用が進むことで、従来の幾何学的な形状にもとづいてのみ製品が生み出されるのではなく、ユーザーの視線で実際に見た風景など、人ありきの想像ができるようになると指摘する。

  • バーチャルの進化による開発プロセスの変化

    バーチャル空間でより現実に近い環境が実現されると、実際の環境においてドライバーがどのように感じるか、といったことも交えた製品評価が行なえるようになる

また、自動運転の実現には、実走行データに加え、多種多様な、それこそ実世界で起こると大惨事を引き起こしかねないシチュエーションを踏まえた走行試験なども含めた仮想空間を用いた走行シミュレーションを何億kmという単位で行なうことが求められるが、仮想空間でのセンサによる走行状況の把握や、走行時のトラフィックコントロールなどには、正確な外部環境の認識が絶対条件であり、太陽光がどのような角度で、どういった強さで照射されるのか、といった情報は必須となる。

そうしたことの実現に向け、OPTISが機能強化を進めているのが自律走行車シミュレータ「VRXperience(VRX)」で現状は、リアルタイムに、さまざまな外環境の照明条件下において、路面に照射される(フロントライトなど)灯具の配光を確認する事を可能だが、今後はセンサ関連などの対応が進んでいく予定だとのことで、そうしたことが実現されれば、将来的には自動車だけでなく、ロボットやUAV、ドローン、船舶といった別の自律運用が求められる分野への展開も期待できるようになるとする。

  • より物理に近いバーチャル空間ができれば、そこでさまざまな開発が可能となる
  • より物理に近いバーチャル空間ができれば、そこでさまざまな開発が可能となる
  • より物理に近いバーチャル空間ができれば、そこでさまざまな開発が可能となる
  • より物理に近いバーチャル空間ができれば、そこでさまざまな開発が可能となる
  • より物理に近いバーチャル空間ができれば、そこでさまざまな開発が可能となる

さらに、自動運転車の実車へ搭載することで、実走行時に、現実での挙動の前に、さまざまなシナリオを予測できるようになり、予測に基づくベストな挙動を選択することも可能になるともしており、ANSYSとの統合が進めば、自動車のシステム、サブシステムを含め、設計製造のさまざまな部分をバーチャル化できるようになることが期待され、デジタルツインが推進されることが期待できるようになるとしている。そのため、「総合的な物理シミュレーションをカスタマに活用してもらうことで、未来の製品を提供していくという一連のプロセスにおいて、ベストなポジションにいえると言える」ともしており、今後は、より現実に近いバーチャル空間での自動車開発の実現に向け存在感が高まっていくことが期待できるようになるという。

  • 自動運転車に搭載する可能性も

    自動運転車にリアルタイムシミュレータとして搭載すれば、実際の走行の前に、さまざまな走行シナリオを実行。周辺環境も含めベストな挙動を選択して走行することが可能となる