日本マイクロソフトは2018年11月13日、報道関係者向けに最新のOffice、Windows 10の新機能を披露する勉強会を開催した。多くの読者諸氏が気になっているのは、Windows 10 バージョン1809(October 2018 Update)の再配布だろう。
現在は配布停止中であり、これは手動でOctober 2018 Updateを適用した環境の0.01%において、ファイルを消失してしまうという不具合が理由だ。詳細は割愛するが、不具合の原因は「KFR(Known Folder Redirection: 既知フォルダーのリダイレクション)」で、特定の条件が重なった場合に発生する。
日本マイクロソフトは「問題の特定と修正は終えている。Windows Insiderコミュニティで検証し、Windows 10 ビルド17763.107で最終確認の段階に入った」(日本マイクロソフト Microsoft 365 ビジネス本部 製品マーケティング部 シニアプロダクトマネージャー 津隈和樹氏)と説明する。海外では11月のセキュリティ更新プログラムにリリースするとのウワサも聞こえてきており、日時こそ明確にしなかったものの、近日中のリリースを匂わせた。
さて、日本マイクロソフトでは、Windows 10 バージョン1809を「スマホ連携で効率性を高めたアップデート」ととらえている。今回の勉強会は、Windows 10およびOfficeに関する個人・法人向けの特徴的な機能が中心だったが、ここではエンドユーザー向けの内容をピックアップしてご紹介しよう。「タイムライン」「スマホ同期(Yout Phone)」「クリップボード」の3つだ。
タイムラインは、Windows 10 バージョン1803で加わった機能だが、スマートフォンでも利用可能になる。Windows 10 バージョン1809(October 2018 Update)への更新が必要だが、Androidは「Microsoft Launcher 5.0」アプリ、iOSは「Microsoft Edge」アプリを使う。具体的には例えば、当日のプレゼン資料を移動中にスマホから確認したり、簡易的な編集を実現する。
なお、筆者はTestFlightで早期のiOS用Microsoft Edgeを使っているが、タイムライン機能は現れない。この点について日本マイクロソフトに尋ねたところ、社内ベータ版で動作検証を行っている最中で、今後のバージョンアップで対応するとのこと。また、iOSとAndroidで使い方(アプリ)が異なるのは、単純にOS側の仕様だ。iOSではランチャー的な機能を持つアプリは許されず、Android側もアプリ内からタイムラインに関する機能を呼び出せないことから、このような仕様になったそうだ。
当初「Your Phone」の名前だったスマホ同期は、現在はAndroidのみ対応。筆者もWindows 10 バージョン1809とiPhone Xのリンクを試してみたが正常に動作せず、iOSには今後のリリースで対応するという。スマホ同期は、スマホで撮影した直近の写真25枚をPCで再利用し、SMSをPCから受信する機能を備えるが、今後のバージョンアップでメッセージ機能への画像添付もサポートする。合わせて、クリップボードの履歴参照機能は、「絵文字を呼び出す[Win]+[.]キーと同じく、日本のエンジニアチームが開発した機能」(津隈氏)と説明した。蛇足だが、次期バージョンの開発状況を見ると、日本のエンジニアチームは日本語IMEのさらなる向上を目指して開発を続けている。
続いて、Officeシリーズだが、まずは各製品の立ち位置を改めて整理したほうがいいだろう。
日本マイクロソフトは、Office 2016やOffice 2019(2018年9月リリース)を「オンプレミス版」(いわゆるパッケージ版と考えてよい)に位置付け、継続的な機能追加で最新状態を保つのがOffice 365であると語る。
「(Office 2016との比較では)2018年9月時点で320を超える機能が加わっている」(日本マイクロソフト Microsoft 365 ビジネス本部 製品マーケティング部 プロダクトマーケティングマネージャー 広瀬友美氏)という。あくまでもOffice 2019は、Office 365 ProPlusが備えた320超の機能から一部を抜粋して取り込んだものであり、イコールではないとする。なお、個人版Office 2019のリリースは今のところ未定だ。
Office 365 ProPlus固有の新機能として、「黒のテーマ」「3Dモデルのサポート強化」「データからインサイト(洞察)を得たグラフ機能」などを紹介。例えば、ExcelはAI(人工知能)機能を使って選択した表に対するインサイトを提示し、株価や企業情報、地域データも直接取り込める。Office製品群はビジネスツールだが、今では学生もプレゼンくらいは当たり前。このようなAIによる恩恵は「ビジネス(学業)の本質的な部分に時間を割いて生産性を向上できる」(広瀬氏)だろう。
個人的意見としては、個人ユーザーに対してもOffice 2019といったオンプレミス型ではなく、米国のように個人家庭向けOffice 365を日本市場に投入してほしい。しかし、日本独自の市場を考えると(オンプレミス版OfficeのPCプリインストール率が異様に高い)、日本マイクロソフトにすみやかな対応を強いるのは酷というもの。ただし多方面から変化の傾向を耳にしているので、近い将来、個人でもクラウド&AIによる恩恵をOffice経由で享受できるようになるだろう。
阿久津良和(Cactus)