先日、日本マイクロソフトが開催したTech Summit 2018の基調講演では、本邦初公開となった「Windows Virtual Desktop」(以下、WVD)のデモンストレーションが行われた。リンク先の説明にもあるとおり、WVDはMicrosoft Azure経由で提供される仮想デスクトップ環境である。

  • Windows Virtual Desktop

    WVDの作成は通常の仮想マシンとほぼ同等だった

WVDはWindows 10 Enterpriseをマルチユーザー化しているため、同時に複数のユーザーが利用することも可能だ。以前、本誌読者から「家族で使うため、自宅にWindows Serverをたてた」というメールをいただいたが、そのような用途でもWVDは使える。ただ、サーバーPCはオンプレミスではなくクラウドになるため、複数の個人が利用するメリットはさほど大きくない。

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    iOSのリモートデスクトップWebクライアントでアクセスしたWVD

日本マイクロソフトはWVDについて、企業のデジタルトランスフォーメーションを推進する文脈で、リモートワーク需要を満たす存在だと位置付けている。例えば、Windows 7は2020年1月14日にサポート終了を迎えるが、有償でセキュリティ更新プログラムの提供を延長するESU(Extended Security Updates)を発表した。

WVD上でWindows 7を利用する場合、ソフトウェアアシュアランス契約者は2023年1月までサポートされる。企業はレガシーなアプリを使い続けながら、移行アプリを開発するという選択肢を得られる仕組みだ。なお、ESUの対象は「Windows 7 Professional」「Windows 7 Enterprise」のボリュームライセンスで、2023年1月までアップデートを提供する(デバイスごとの課金、さらに1年ごとに料金が上がる)。

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    App-Vのように仮想アプリケーションも並ぶ

このように、WVDは企業向けのVDI(仮想デスクトップ基盤)であり、個人が使うものではないものの、「Windows OSのネットワークコンピューター化」という可能性を提示している。近年、筆者がとみに感じるのは、Windows 10の希薄化だ。一昔前は光学メディアでインストールするものだったWindowsが、現在はPCが起動しなくなってもリカバリーメディアから容易に復元できる。Microsoft 365ならWindows Autopilotを使って初期設定の一部も自動で設定可能だ。

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    デスクトップと別セッションでExcelを起動した状態

GPU付き仮想マシンもすでに登場し、これまでハイエンドなクライアントPCを必要したPCゲームやCADもクラウド側で処理できるようになってきた。いまのところ、GPU付き仮想マシンはランニングコストが高く、ハイエンドPCを購入したほうが安いのだが、所有し続けるよりも体験を得るサブスクリプションエコノミーへと世界は移行しつつある。

WVDのロードマップを見ると、2019年の早期に米国でGA(一般提供)。日本でも2020年までにGAになる予定だが、企業利用が中心だったVDIは形を変えて、消費者にも提供されるのではないだろうか。

阿久津良和(Cactus