楽天との事業協争に関して、記者団が注目したのはKDDIによるローミング提供(通信ネットワークの設備を貸すこと)について。楽天はかねて、NTTドコモ、KDDI、ソフトバンクに次ぐ“第4のキャリア”になることを表明していました。しかし、基地局の建設にともなう設備投資の額が小さすぎる、との指摘も受けていました。その理由が判明したというわけです。

  • KDDIと楽天の事業協争について

「楽天さんからは、今年になってからローミングの申し出があり、お受けすることにした。たぶんNTTドコモさん、ソフトバンクさんにも話があったかと思う。条件面で話をして合意した。東京都23区、大阪市、名古屋市といった混雑するエリアを除く全国のエリアにおいて、KDDIの通信ネットワークを提供する。弊社としては、新たな投資も必要ない」(高橋社長)。

楽天では、KDDIの設備を間借りした通信サービスを2019年10月から提供開始する見込みです。

一方、“au経済圏”を拡大したいKDDIでは、来年(2019年)4月に新たなスマホ決済サービス「au PAY」を開始します。そこでKDDIは、楽天の決済・物流プラットフォームに着目。先行する楽天ペイに相乗りすることで、サービスの急激な拡大をはかります。

「我々としても楽天さんの、全国で約120万カ所以上という規模で展開する加盟店を生かしたサービスに興味があった。お互いに良い結果が得られると判断し、一緒にやっていくことになった」(高橋社長)。

  • 事業協争によって、社会基盤の構築とサービスの進化を加速させていきたい考え

記者団から、ローミング提供にはUQ WiMAXも含まれるのか、また、楽天のリアル店舗をKDDIが間借りする(その逆も)ことはあるのか、と問われた高橋社長。「ローミングに関しては我々のネットワークをそのままお貸しするので、UQのネットワークも含まれている。ここは協調の部分。一方でお互いのショップを融通することは考えていない。ここは競争の部分になる」(高橋社長)と回答しました。

また、楽天が地方の通信ネットワークをKDDIに借り続けることも可能なのか、といった質問には「ネットワークの免許をいただくときに、基地局開設までの計画を国に申請する。それは何年度までに何%、といったもので、楽天さんもそれに従っているはず。我々としては、2026年3月末まで通信ネットワークを提供していくことになる」と高橋社長。

楽天が負担するローミングの利用料金は、MVNOの接続料と比較すると高いのでしょうか、安いのでしょうか。これについては「MVNOさんには全国エリアの通信ネットワークをお貸ししている。都心は設備投資の効率が良いので安い。でも楽天さんの場合は地方なので、設備投資効率の悪いところを貸す。だから単価としては、MVNOの接続料よりも高くなる」とのことでした。

QRコード決済の手数料は安いので、利益にはつながらないのでは、といった指摘も。

「au WALLETのポイント、チャージ額を合算すると1,000億円超の規模になる。これをリアル店舗で使う仕組みが、いまオレンジ色のプリペイドカードしかない。ここにQRコード決済を付加したい。これがau PAY。

メリットとしては、貯まっているポイント、チャージ額を使ってもらうことでユーザー満足度が上がり、通信のお客さまのリテンション(既存の顧客維持)にもつながる。その延長線上に金融サービスも考えている。全体として利益を創出できる」(高橋社長)と説明しました。