日本HPから、レザー素材が高い質感を演出する13.3型コンバーチブル2in1 PC「HP Spectre Folio 13」が発表されました。デザイン部門の責任者、ステイシー・ウルフ氏に話を聞きました。
革の肌触りが良いHP Spectre Folio 13
HP Spectre Folio 13は、コンバーチブル型2in1 PCの外装とキーボード周辺に、なんとフルグレインレザー(革素材)を使ったという斬新なモデル。カラバリとして、コニャックブラウンとボルドーバーガンディー(2019年早春に追加予定)があります。店頭予想価格は税別169,800円前後です。
レザーを採用した狙いは?
肌触りの良い柔らかいレザーを大胆に使った、新発想のプレミアムPC、ステイシー氏の掲げる「人の行動に基づいたデザイン設計」という開発コンセプトについて聞きました。
ステイシー氏「私たちはユーザーがPCを使うシーンを想像して、どこかに存在する、まだ満たされていないニーズを見つけようと努力しています。人間の行動は幅広いので、インサイト(知見、洞察)の観点から人の行動を分析するわけです。
そして、それをデザインに落とし込みます。プレミアムPCを開発するメーカーはたくさんありますが、弊社ではPCで『ユーザーのライフスタイル』を表現することを目指しており、この点で差別化を図っています」
―― 優れたデザインのプロダクトはユーザー体験にどのような影響を与えると考えていますか?
ステイシー氏「ユーザー体験とは、ショップに行って、初めてプロダクトを見て、触って、というところ、またはWebで情報を見て……というところからスタートします。さらには購入して箱から出して、使い始めて、何日も製品と関わりあって、少しずつ育まれていく。
だから究極的には、ユーザーがプロダクトに恋をしてしまうような、優れたデザインに仕上げるのが目標ですね。自分のコンパニオンになり、いつも持ち歩きたいと思うようになる、そんなユーザー体験を実現したいと考えています」
―― HP Spectre Folio 13は2カラーの展開です。外側だけでなく、キーボードカラーも違うのですね。
ステイシー氏「先にライフスタイルのお話をしました。そこで、カラーに選択肢を持たせることが重要と考えました。レザー製品と聞いて、まず思い浮かべる色としてコニャック(編注:茶色)。でも、ユーザー全員が同じ好みではありません。
そこでボルドーバーガンディー色も追加します。女性にも男性にもアピールできる2色を用意しました。コニャックのキーボードはブラック、ボルドーバーガンディーのキーボードはゴールドアルミニウムという違いにも注目してください」
―― HP Spectre Folio 13の素材にレザーを使うと決めた理由は? また、ほかの素材も検討したのでしょうか。
ステイシー氏「素材、機能、どちらが先かという話にもなりそうですね。機能ありきですが、実は素材が機能をサポートしてくれた側面もあります。コンバーチブルPCは、すでに市場にたくさん出ています。キーボードが離れるもの、キックスタンドが使えるもの、折り紙のような構造のものなど。
ただ、多くの製品では、膝の上のような不安定な場所では使いにくいという弱点がありました。そこで、まずはノートPCとして満足に使える形を考えました。移動中、旅行中、どんなポジションであっても膝から離れない。これを重要視しました。そこでレザー素材が最適だったのです」
ステイシー氏「さらに、レザーなら新しい高級バッグのような触覚の良さを実現できますし、嗅覚に伝わるレザー特有の上品な匂いもあります。つまりレザーなら、五感に訴えるPCを作れると考えたわけです。
新しいユーザー体験を届ける、ドンピシャの素材でした。ほかにも素材は検討しましたが、レザーは、人が生まれたときから存在している天然素材。時の壁を超えられるモノなんです」。
―― レザーが持つ機能性、美しさを生かすためには、様々な試行錯誤があっと思います。
ステイシー氏「その通りです。自然素材を扱うときには、職人の技が必要になります。そこでデザイナーは、どのように使えるのか、鞣し(なめし)はどうすれば良いのか、そういったことをイチから勉強しなければいけません。これが最初の課題でした。
壁にぶつかる度に新しい気付きが得られました。社外からもリソースを得て、さらに専門家のガイダンスを受けるなどして、開発を進めていきました。HP Spectre Folio 13では、レザーとアルミニウム、マグネシウムが結合しています。簡単にいうと接着剤で一体化しています」
―― 金属をレザーで覆う設計ということで、素人目には「熱がこもってしまうのでは」と心配になります。熱設計は大丈夫なのでしょうか。
ステイシー氏「トップにマグネシウム、ボトムにアルミニウムを使っています。マグネシウムは軽量化のためです。アルミニウムは熱伝導性が高く、HP Spectre Folio 13はファンレスの設計なので、プロセッサなど本体内部の熱はボトムのアルミに伝導していきます。
さらにレザーは、過去の歴史を紐解いても断熱のために使われてきましたね。このため、ユーザーが熱いと感じることがありません。アルミの構造を工夫するなどして、うまく放熱できるようにしています。レザーによって不快な熱をユーザーに伝わるのを防ぎ、なおかつマシンをうまく冷やしているわけです」
―― 最後に、人生の中で影響を受けたプロダクトやデザインを教えてください。
ステイシー氏「色々ありますが、製品を使用中に新しいディスカバリー(発見)とエクスペリエンス(体験)が得られる製品が大好きですね。
職人技が込められており、あたかも芸術作品のような存在感があるもの。高品質なもの、耐久性のあるものに多い気がします。具体的には、カメラや自動車などでしょうか。HPの製品にも、そうしたエッセンスを盛り込んでいけたらと考えています」