東京大学(東大)は10月4日、東大が独自に開発を進めているがん遺伝子パネル検査「Todai OncoPanel(東大オンコパネル)」の臨床性能試験を先進医療Bで開始することを発表した。
がん遺伝子パネル検査は、1回の検査で、複数の遺伝子を網羅的に解析することで、がんの原因となる遺伝子の異常の判別や、治療に向けた情報の取得などを行なおうというもの。国内外のさまざまな研究機関や企業などが、その研究開発に取り組んでいる。
東大オンコパネルは、東京大学大学院医学系研究科 間野博行教授(現 国立がん研究センター 研究所長)の研究室が中心となって開発された東大独自のがん遺伝子検査パネル。2017年から東京大学医学部附属病院(東大病院)にて臨床研究として実際に使用してその実用性が調査されてきたが、その後、先進医療Bとしての実施に向け、2018年4月に先進医療技術部会にて適用を受けたのち、同7月に先進医療会議の承認を経て、7月31日付けで厚生労働省から実施についての告示がなされた。
東大オンコパネルの最大の特徴は、464遺伝子を対象としたDNAパネルでの解析に加え、分解されやすいため、解析には不向きとされているRNAも463遺伝子の解析が可能であり、これにより、DNAの解析では難しい、複数の遺伝子が融合して、がん化を促進する融合遺伝子も検出しやすくなるため、さまざまながんに対応が可能という点。また、東大が独自に開発しているものであるため、今後、新たな遺伝子の変異が登場したとしても、柔軟かつ臨機応変的にそれらを追加して拡張していくことができるといったことも可能だという。
さらに、東大オンコパネルでは、遺伝子の名前だけで、エビデンスレベルを決めるのではなく、変異がどこにどのようにして起こっているのかを調べることで、変異に対する意義付けを実施。それにより、よりその患者にそった治療薬(候補薬)の選定などを可能にするとしている。
今回の臨床性能試験は、保険診療と先進的な医療の併用が認められる先進医療Bとして、パネルの治療選択における有用性の検証を目的に、東大病院および、今回の研究における連携医療機関(2018年10月4日時点で16病院が連携)において、病理学的診断によって、悪性腫瘍であることが診断されている(がん腫、肉腫いずれも含むが血液腫瘍は除く)が、治癒切除不能または再発により、標準治療による根治が困難と考えられるため、標準治療がない、もしくは標準治療が終了している(終了が見込まれる)患者のうち、全身状態が良好である患者を対象として実施されるもの。予定症例数は200例で、試験期間は1年6か月を予定している。
検査の流れとしては、患者に対して研究についての説明を行うのと併せて同意を得た後、腫瘍組織を準備。患者の血液を採取し、そこから遺伝子解析を実施。得られた結果をデータベースと照合し、さまざまな領域の専門家で構成されるエキスパートパネルにおいて、解析結果の意義付けが行なわれ、最終的にまとめられたレポートが担当医に送られ、担当医から患者に結果の説明が行なわれる、というものとなる。
今回の試験は、先進医療Bとして行われることから、ゲノム解析に係る検体の作成、遺伝子解析に関わる費用、および検体を取り扱う技術費用などは患者の自己負担となり、その費用は91万5000円となる。
なお、同大では、今回の研究成果などを踏まえ、薬事承認申請につなげていきたいとしているほか、日本国内での薬事承認はもとより、世界の標準がん遺伝子検査パネルになることも目指していきたいと意気込みを語っている。