新型iPhoneの話題がモバイル業界を席巻する中、Googleが対抗策を打ち出してきた。独自のAndroidスマホ「Pixel」シリーズを国内に初めて投入するという。

インターネットサービスやAIで世界をリードするGoogleだが、独自のスマホ製品は2015年を最後に日本での発売が途絶えている。iPhoneがシェアの半数を占めるこの国で勝ち目はあるのだろうか。

Googleの国内向けスマホは2015年以来

Googleのスマホといえば「Nexus」シリーズを覚えている人もいるだろう。2013年にはワイモバイル(当時のイー・モバイル)の「Nexus 5」が大ヒットを記録。だがその後は2015年の「Nexus 5X/6P」の販売を最後に、日本への端末投入は途絶えている。

2015年冬モデルとしてNTTドコモとソフトバンクがNexusシリーズを発売

海外では2016年からGoogleが自社で設計する「Pixel」に移行。現在は2017年モデルの「Pixel 2」が売られている。2018年1月には台湾HTCのスマホ開発部門の買収を完了するなどGoogleがハードウェア戦略を拡大する中で、10月9日には「Pixel 3」とみられる次期モデルがニューヨークで発表予定となっている。

米国で売られる「Pixel 2」(右)と「Pixel 2 XL」(左) (2018年9月撮影)

これに合わせて国内でも新たな動きが出てきた。9月12日には日本経済新聞による「Pixel国内発売」の報道に対し、Googleは「当社が発表したものではない」とコメントしたものの、9月14日には日本向けティザーサイトをオープン。日本法人のお膝元である六本木ヒルズには東京タワーをバックにしたPixelのオブジェを設置するなど、話題作りを進めている。

六本木ヒルズに設置された「Google Pixel」のオブジェ

Pixelとはどんなスマホなのか。Google純正のAndroid端末といえば人気が高そうに思えるが、その実績は芳しくない。IDCの調査によれば2017年の出荷台数は前年の2倍に増えたとはいえ、390万台にとどまったという。14億台を超える世界のスマホ市場で大きなシェアを取るには至っていない。

背景には、スマホ市場の二極化がある。世界のスマホシェアは自社でプロセッサ(SoC)を設計するサムスン電子、アップル、ファーウェイがトップ3を占めており、開発競争でも優位に立つ。他メーカーは安さや地域への特化で勝負しているが、果たして「Pixel 3」の勝算はどこにあるのだろうか。

AIやモバイル決済と強みは満載、大手キャリアの動きに注目

Pixelシリーズの強みとして、Android OSを開発するGoogle自身の端末という点がある。Androidの最新機能やサービスは、最初にPixel向けに提供されることが増えてきた。これらをいち早く手にしたいアプリ開発者やアーリーアダプターには大きな魅力がある。

カメラも他社に負けていない。Pixel 2は「DxOMarkモバイル」のスコアでiPhone Xを上回る評価を得ている。その中でカメラの画質を左右する要素になってきたのが「AI」だ。「食べ物」や「夜景」といったシーンの検出はもちろん、機械学習で被写体が犬なのか猫なのかを判別できれば、ユーザーの思い通りの写真に仕上げやすいというわけだ。

また、カメラはQRコードの読み取りにも使うように、情報入力のインタフェースになりつつある。Googleが開発を進める「Googleレンズ」では、被写体に写った有名な建造物や、住所や電話番号といった文字情報を解析できる。Pixel 3では、こうしたAI機能を前面に押し出してくる可能性もありそうだ。

日本版Pixelは「おサイフケータイ」対応も予想される。Googleのモバイル決済「Google Pay」は、2018年5月のSuica対応に合わせて多数の広告を展開するなど、認知度向上に努めてきた。Google自身がおサイフ対応スマホを発売すれば、モバイル決済の普及に追い風となることは間違いない。

Suica対応による「Google Pay」の広告展開 (2018年6月撮影)

果たしてPixelはiPhoneのシェアが高い日本で売れるのか。そこで期待されるのが大手キャリアによる取り扱いだ。10月には「iPhone XR」の発売や冬モデルの発表が控えている。その中で大手キャリアがPixelを主役級の商品に位置付けるかどうかが注目ポイントになりそうだ。

(山口健太)