これまで、フィットネス、コミュニケーション、健康にフォーカスしてきたApple Watchは、改めて「時計」、また「スマートウォッチ」としてのデザインを熟考し、細部にまで神経を尖らせて新しい息吹を与えた。そうしたアプローチこそ、歴史ある腕時計への敬意の表し方だったのではないだろうか。

しかし、それだけで終わらないのが、Apple Watch Series 4だ。

ハードウェア的進化では、クリアに通話を楽しめるよう、大音量化したスピーカーと新設計のマイクに触れておきたい。これらはwatchOS 5で搭載された「トランシーバー」アプリのために盛り込まれたものであるのは想像に難くない。

  • Apple Watch Series 4(下)とApple Watch Series 3(上)。左側面は大口径化したスピーカーのみに変更され、ハウリングを防いでいる。厚みの違いに注目

また、強化されたモーションセンサーを生かした転倒検出機能や、米国で今年中に利用できるようになる心電図など、健康面から医療面に向かう新しいスマートウォッチの役割を切り拓く要素も見られる。

  • 転倒検出機能は、のべ25万日にも及ぶデータを数年間かけて収集してアルゴリズムを作り、モーションセンサーを強化して実現した

  • Apple Watch Series 4(左)とApple Watch Series 3(右)。デジタルクラウンのデザインは、心電図に対応するため、伝導性のある素材に変更された。またマイクがデジタルクラウンとサイドボタンの間に移されている

  • Apple Watch Series 4(左)とApple Watch Series 3(右)。ケース背面は全面がサファイアガラスに変更された。こちらも、心拍計に加え、心電図に対応するブラックサファイアがあしらわれている

Apple Watchは、iPhoneと組み合わせるデバイスであり続ける。しかし今回の刷新によって、iPhoneではカバーできていない、よりパーソナルな領域へと、情報・コミュニケーション・健康・安全性などを押し広げている点で、これまでの立ち位置が変わってくることになるだろう。

  • 健康から医療へ

一度Apple Watch Series 4を試すと、デザイン変更以上のインパクトが感じられる。そしてそのインパクトが、今後数年にわたってスマートウォッチのジャンルで影響を及ぼし続けることになるだろうと、簡単に想像することができるのだ。

松村太郎(まつむらたろう)


1980年生まれ・米国カリフォルニア州バークレー在住のジャーナリスト・著者。慶應義塾大学政策・メディア研究科修士課程修了。慶應義塾大学SFC研究所上席所員(訪問)、キャスタリア株式会社取締役研究責任者、ビジネス・ブレークスルー大学講師。近著に「LinkedInスタートブック」(日経BP刊)、「スマートフォン新時代」(NTT出版刊)、「ソーシャルラーニング入門」(日経BP刊)など。ウェブサイトはこちら / Twitter @taromatsumura