米Intelは11日(現地時間)、米国ロサンゼルスで「Intel 5G Summit」を開催しました。同社の5Gに対する取り組みについて、サーバーからクライアントまで、全方位で5Gに注力していく方針をアピールする機会となりました。

幅広いカバレッジがIntelの強み

  • 「これがIntelの5G」というテーマでスタートしたIntel 5G Summit

  • IntelのSandra Rivera氏

はじめに登壇したIntel Senior Vice President, General Manager, Network Platforms GroupのSandra Rivera氏は、モバイルでのデータトラフィックは、2023年に17年の8倍、1分間に平均2PBに達するとの予測を紹介。モバイルでの動画トラフィックも年45%で増加し、23年には全モバイルトラフィックの73%に。さらにIoTのコネクションは314億に達し、年11%の成長率になるといいます。

こうしたトラフィックの拡大をカバーするのが5Gで、Rivera氏は5Gが無線技術としてだけではなく、イノベーションを起こすプラットフォームだとしています。2Gは音声のネットワーク、3Gはデータ、そして4Gは高速化を果たしました。

5Gでもさらなる高速化が実現できますが、これに加えて、低遅延と大容量によるVR/AR、高精細動画といった分野での活用や、自動運転やスマート工場のような大量の機器同士の連携のような活用もできる点を強調します。

2035年には、2.5兆ドルのバリューチェーンに対する効果があり、10兆ドルの経済効果、米国だけで20億人以上の経済創出の効果がある、とその効果を説明するRivera氏。

その実現に向けて、Intelでは5G NRモデムからネットワーク、データセンターやクラウド、AIにいたる広範な製品ポートフォリオを持っているとアピールしていました。

  • Intelの5G関連の技術

XeonをはじめとしたCPUやSoC、Ethernetアダプター、シリコン・フォトニクス、4G/5Gモデムといったハードウェアから各種ソフトウェア、サービスといった幅広いカバレッジがIntelの強みです。

パートナーとのコラボレーションをアピール

5Gでの取り組みとして韓国で2018年2月に開催された平昌五輪において、競技のライブストリーミングをはじめとした実地でのテストも実施されました。3800TBのネットワーク容量を提供し、22のライブを10都市に対して行ったそうです。これはIntelに加えて、KT、Nokia、Ericssonなどが協力したということです。

上海では、スタジアムでの高精細映像の配信で、チャイナユニコムとNokia、テンセントがともにテストを行い、ライブストリーミングで30秒の遅延が0.5秒まで削減され、60倍の改善が得られたといいます。

5Gの実現のためには、エコシステムへの投資やオープンソースと標準化への貢献が必要だとRivera氏。5年前から300社以上に投資をして、それらの企業は4Gや5Gに対して貢献する企業となっているほか、Linux Foundationのプロジェクト、3GPPやIEEEなどの標準化でも貢献をしているとしています。

そうした中で、Intelはさらなるコラボレーションを発表しています。1つはNokiaで、ゲストとしてNetworks Marketing and CommunicationsのVice PresidentであるPhil Twist氏が登壇して提携を紹介しました。

  • NokiaのTwist氏

  • 各種ハードウェアからネットワークまでIntelと協業

クラウド向けの同社製品におけるXeonプロセッサや無線製品におけるIntelチップの採用で、性能改善やアンテナのサイズ削減などの効果があるといいます。

IntelとフィンランドのTeliaとの協業では、28GHzの周波数帯を使ったネットワークを工場内に構築し、エッジクラウドでリアルタイムにAIによる映像処理をして、品質管理をしているそうです。チャイナテレコムとは、AIによるネットワークの最適化で遅延を削減し、特にクラウドゲームにおける効果を発揮しているそうです。

  • NokiaとIntelの協業の例

Ericssonは、Heads of Networks Portfolio Management Product Area NetworksのJawad Manssour氏がゲストとして参加。Ericssonのネットワーク製品は2015年以降は5Gへのアップグレードに対応している点を紹介したManssour氏。EricssonはIntelとともに日本のNTTドコモ、KDDI、ソフトバンクをはじめ、5G対応を表明した40の各国のネットワーク事業者などと協業することをアピールしました。

  • EricssonのManssour氏

  • すでに同社製品は5G対応を進めています

  • 日本を含む各国のネットワーク事業者とパートナーを組んでいます

  • ちなみに、現地時間13日から開催されるMobile World Congress Americas 2018の会場で、ミリ波(38GHz帯)を使ったライブデモを実施するそうです

5Gは、各種メディアにも影響を与えるとRivera氏は言います。2028年にはモバイルメディアの収益が4200億ドルに達し、AR/VRではこの10年で5Gによる収益増加が1400億ドルに拡大すると指摘します。モバイル広告では1780億ドルの収益が実現し、350億ドルは車内向けエンタテインメントによるものだとの予測を披露します。

こうしたメディア関連の企業として、Rivera氏はFox SportsにおけるTechnical & Field OperationsのSenior Vice PresidentであるMike Davies氏、Fox Innovation LabにおけるGlobal Business & Tech StrategyのExecutive DirectorであるRobert Powers氏、AT&TにおけるWireless Network Architecture & DesignのSenior Vice PresidentであるIgal Elbaz氏、そしてEricssonのManssour氏を招きました。

  • ゲストで登場したメディア事業者とネットワーク事業者の面々

Fox SportsのDavies氏は、5Gを使うことで「ゴルフ中継で有線を張り巡らせたり、高価なマイクロ波(による無線伝送)やほかの技術を使わなくても新しいことができる」とそのメリットを強調。実際に全米オープンゴルフでIntelの5Gを使って4Kカメラの映像を伝送したそうです。

5Gのメリットは、個人それぞれにカスタマイズされた体験を提供でき、ARなどで視聴者に新たな情報を提供できるなど、メディアのユーザー体験を進化させることができるというのが、登壇者の一致した意見のようでした。

これ以外にもIntelは、韓国のSK Telecomと協業し、メディア事業における5Gのユースケース拡大に協力するとしています。これはスポーツ中継も含まれており、VRを使ったパーソナライズされた視点を提供するといいます。

HTC VIVEを無線化

そこで紹介されたのが、HTCのVRヘッドセットであるVIVEを無線化したものです。VIVEにアダプタを接続し、ミリ波による通信が可能になるというもので、5Gの技術を使って無線でも低遅延のVRが利用できるとしています。

  • 5G技術を使ったワイヤレスのHTC VIVE

  • 実際のデモの様子。上部がアダプターで、背面から伸びているケーブルはポケットなどに入れたモバイルバッテリーに接続して電源を供給しています

最後のゲストとして、Warner Bros. EntertainmentのCTOであるVicky Colf氏が登壇。同社が注力しているという位置情報を使ったエンターテインメント体験で、AR/VRを使ってインタラクティブなゲームを実現しようとしているそうです。5Gとクラウドコンピューティングによって、消費者の体験を拡大できるとしています。

  • Warner Bros.のColf氏

また、ポストプロダクションなど、制作の現場でも大量のファイルとデータをやりとりしていますが、5Gとクラウドコンピューティングによってこれが高速化して待ち時間が減少する、と指摘します。さらに、5Gを使ったコネクテッドカーにも期待を寄せ、エンターテインメント環境を提供することも検討しているそうです。

  • 位置情報ベースのエンターテインメントや車内エンターテインメントに期待するColf氏

「5Gはまだ初期の段階です」とRivera氏はいい、5Gへの移行を推進するために、パートナーとともに取り組みを継続していく計画です。「5GはIntelの上で動きます(5G runs on Intel)」。Rivera氏はそういって講演を締めくくりました。

  • こちらはデモエリアに展示されていた5G対応2-in-1 PC。28GHz帯を使って動画を視聴するデモを実施していました

基調講演の後に実施されたラウンドテーブルで、Intelの5G Strategy and Program Office, Network Platforms GroupのGeneral ManagerであるAlex Quach氏は、5GモデムなどでライバルとなるQualcommやHuaweiとの違いについて説明。

  • IntelのQuach氏

Qualcommとは異なり、Intelはバックエンドでの技術でもプレゼンスがあり、モデムも「Qualcommのモデムは素晴らしい」としつつ、5Gと4Gに対応したマルチモードモデムを19年下半期に提供することを優位点としてあげています。

「ワイヤレスは氷山の一角です。重要なのはその下に隠れている氷山の本体で、それがネットワークです」と指摘するQuach氏。モデムだけでなく、パートナーシップを含めてネットワーク全体を構築する同社の優位性をアピールします。

Huaweiは、Intelベースのソリューションも提供しており、その観点で「Huaweiは競合ではない」といいます。モデムこそ競合していますが、5Gネットワーク全体では協力関係にあるという認識のようでした。