英Armが8月16日 (現地時間)に、同社としては初めてクライアントCPUのロードマップを公表した。モバイルデバイスに採用されるArmプロセッサの効率性を保ちながら、2020年まで毎年、前年比15%以上のパフォーマンスの向上を継続する。"常時オン、常時接続"デバイスが求められる5G時代の到来が、x86/x64 CPUが占めるノートPC市場にArmが食い込む追い風になるとしている。

Armは今年6月、COMPUTEX開催に合わせて、7nmプロセス (2018年後半に立ち上がる見通し)に最適化したCPU「Cortex-A76」を発表した。モバイルゲーム、ARやVR、AIといった成長著しい分野のニーズに応えるモバイル向けプロセッサだ。PC向けCPUのパフォーマンスの伸びが「ムーアの法則」の鈍化と共に減速する中、Cortex-A76は前年比で35%もの向上を達成し、スマートフォンの可能性を広げると共に、今日のマス市場向けノートPCのCPUと競争できるレベルにCortexのパフォーマンスを引き上げる。

  • Cortex-A76

    低いTDPで、Core i5に匹敵するパフォーマンスを実現するCortex-A76

「2018年はArm PCエコシステムが成長の第一歩を踏み出す重要な年だった」とNandan Nayampally氏 (Vice President and General Manager, Client Line of Business)。

Cortex-A76に続いて、2018年に「Arm DynamIQ」ベースで7nmに最適化した「Deimos」(コードネーム)をパートナーに提供。引き続き今日のPC向けCPUを上回るパフォーマンスの向上を実現し、DeimosはCortex-A76から15%以上の向上になる。そして、2019年にDynamIQベースで7nmと5nmの両方に対応させた「Hercules」(同)のパートナーへの提供を開始する計画だ。Herculesではパフォーマンスの伸びを維持しながら、およそ10%の効率性の向上を実現、5nmプロセスへの移行でさらに効率性が増すという。

ArmのクライアントCPUは、ファウンダリ・パートナーの前進と共に、5G世代のクライアントデバイスを実現するデザインになっている。加えて、Arm Artisan Physical IPプラットフォームとPOP IPによって、パートナーがどのプロセスを採用するにしても、ファウンドリの提供するプロセスごとに最適な実装を行える。たとえば、Cortex-A76ベースの実装において、今日のマス市場向けx86プロセッサのおよそ半分の電力バジェットで、3.0GHzを超えて最大3.3GHzにまでクロックスピードを引き上げるチャンスをパートナーにもたらしている。

「スマートフォンを人々が手にするコンピュート・プラットフォームに変えるイノベーションのペースが、大きなスクリーンのデバイスのトランスフォームを起こしている。巨大なPC産業は今、鈍化したムーアの法則から自身を解き放ち、コンシューマやビジネスが5G時代に移行するのに必要なモバイルプロダクティビティ体験を提供する準備ができているのか? という問いに直面している」とNayampally氏 。