宇宙航空研究開発機構(JAXA)は9月5日、小惑星探査機「はやぶさ2」に関する記者説明会を開催し、最新の運用状況や、今月投下を予定している小型ローバー「MINERVA-II」などについて説明を行った。MINERVA-IIは、はやぶさ初号機に搭載した「MINERVA」の後継機。初号機では小惑星への投下に失敗しており、今度は成功するか注目だ。

BOX-B運用で南極側の撮影に成功

まずは探査機の運用状況であるが、8月18日より「BOX-B」運用を開始したという。BOX-B運用は、小惑星の方向を「下」と考えたときに、前後または左右に大きく移動する運用である。はやぶさ2は通常、高度20kmのホームポジションから観測を行っているが、そこから移動することで、違った角度から小惑星を観測することができる。

今回のBOX-B運用では、まず+Y方向(南極側)へ移動、同24日にホームポジションから9km離れた位置に到着した。そして次は斜めに移動し、同31日に、-X方向(夕方側)に9kmの位置に到着した。それぞれ1日ずつ滞在し、観測を行ったという。現在、探査機はホームポジションへの帰路にあり、9月7日に戻る予定となっている。

  • 今回のBOX-B運用における移動経路

    今回のBOX-B運用における移動経路。南極側と夕方側へ移動した (C)JAXA

まず南極側に向かったのは、南極付近に最も大きな岩塊(ボルダー)があり、この観測を行いたかったからだ。そして夕方側では、影が見えるので表面の凹凸がよく分かる、夕方から夜になる領域で温度変化が大きい、といった点に注目しているという。

  • 南極側から撮影した画像

    南極側から撮影した画像。巨大な岩塊が良く見えている (C)JAXA、東大など

なお、今回観測しなかった北極側と朝側については、現時点では未定であるものの、吉川真ミッションマネージャ(JAXA宇宙科学研究所 宇宙機応用工学研究系 准教授)によれば、今後、余裕があるときに観測したいとのこと。ただ年内はすでにスケジュールが厳しく、来年になる模様だ。

タッチダウンに向けたスケジュール

そして今後の運用であるが、9月11日より、タッチダウンの1回目リハーサルを実施する予定だ。今回のリハーサルでは、高度30m以下まで降下することを狙う。

  • リハーサルの運用計画

    。9月12日14時頃に最下点に到達する予定 (C)JAXA

はやぶさ2は、レーザー高度計(LIDAR)で高度を見ながら降下していくが、高度40m以下になると、近距離用のレーザーレンジファインダ(LRF)に切り替える。LRFは、探査機下方の4方向にレーザーを照射し、それぞれ距離を計測することで、地面の傾きまで分かる。タッチダウンには必須の機器で、その動作確認が大きな目的だ。

同時に、着陸候補地点「L08」を近距離から観測することも今回の重要なミッション。着陸に支障がある岩がどのくらいあるのか、安全に着陸できそうな場所はあるのか、このリハーサルである程度明らかになるだろう。バックアップ地点の「L07」「M04」もL08からは近く、同時に撮影して情報を収集する計画だ。

  • はやぶさ2の着陸候補地点

    はやぶさ2の着陸候補地点。最有力候補が「L08」だ (C)JAXA、東大など