米GLOBALFOUNDRIES(GF)は米国時間の8月27日、「GLOBALFOUNDRIES Reshapes Technology Portfolio to Intensify Focus on Growing Demand for Differentiated Offerings」と題するプレスリリースを出し、この中で7nmプロセスの開発を無期限に延期することを明らかにした。

もともと同社は14nm世代で、自身で開発していた14XMプロセスを途中で放棄。Samsungから14LPE/14LPPプロセスを導入してAMDのRyzenやVegaなどの製品を製造していた。またこれを改良した12LPプロセスを昨年から導入しており(Photo01)、こちらもAMDがRyzen 2で製造に利用している。

  • GFの12nmプロセス

    Photo01:2017年9月に開催されたGTC(Globalfoundries Technology Forum)2017のハイライトビデオより

GFの未来を担う予定であった7nmプロセス

ただSamsungからテクノロジーをライセンスして利用するというビジネスは、同社にとって美味しいものではなかったようで、続く10nm以降のプロセスについてはライセンスを継続せず、再び自主開発路線に戻ることになっていた。具体的には10nmはスキップし、7nmでTSMCやSamsungをキャッチアップするというもので(Photo02)、2017年5月に行われた記者会見では7nmプロセスは性能を30%アップしながら消費電力を60%減、そしてトランジスタ密度を倍に出来るという見通しが語られていた

  • 計画では10nmをスキップし、7nmに行く計画としていた

    Photo02:2017年5月の記者会見資料より。10nmはあまりメリットがないので、直接7nmに行くとしていた

実際、この記者会見では、同社のSenior VPであるGregg Bartlett氏が「7nmはファウンドリにとって、長く使われるプロセスになると考えられているほか、EUVへの移行がはかられるという重要なプロセスに位置づけられている」と語っていた。

  • 7nmプロセスを延期した後はどうなるのか

    Photo03:5Gに関してはRF FD-SOIを強力に推している同社だが、サーバ/データセンターやディープニューラルネットワーク(DNN)などでは今後どういうソリューションを提供するつもりなのか(or 完全撤退するか)気になる部分だ

7nmではなく14nm/12nmの充実を選択

その7nmであるが、2018年7月25日に行われたAMDの第2四半期の決算発表のカンファレンスコールの中で、同社CEOであるLisa Su博士が「現在サンプリング中の7nmのEPYCはTSMCによって製造されている」と述べており、TSMCがVega 7nmとEPYC 2を同社のFab 15で製造していることを認めたことで、少なくともArF+液浸という7nmの第一世代に関してGFはAMD向けの製品を製造していないことが明らかになっている。

さて肝心のGFのリリースであるが、同社はFinFETのロードマップを再編し、7nm FinFETプログラムを無期限に延期。これまで7nm FinFETに携わっていたエンジニアリングチームは、14/12nm FinFETプロセス向けのポートフォリオの強化に再配置するとしている。この理由について、7nm以降の最先端プロセスを求める顧客はそう多くなく、同社の顧客はむしろ14/12nm FinFETプロセスに対して省電力化やRF、Embedded Memory、あるいはさまざまなIPを充実させることを望んでおり、7nmプロセス向けの開発費用を14/12nm FinFETプロセスの充実に充てることが可能になる、と説明している。

ASIC事業を子会社として独立

また同社はASIC事業部を独立子会社として切り出すことも明らかにした。すでに同社は7nm FinFETを利用した「FX-7」というASIC向けのプラットフォームを2017年に発表しているが、このASIC子会社は代替ファウンダリオプション(つまりGF以外による7nm ASICプラットフォームの提供)を含むASICビジネスを行っていくと説明されている。

その一方で同社が2015年に発表したFD-SOIに関しては引き続き提供および開発を行っていく、としている。要するに7nm(とその先)だけを完全に切り捨てる決断をしたわけだ。

なぜGFは7nmの開発延期を決めたのか

ちなみにこの決断を行ったのは、前任者のSanjay Jha氏の後を継いで今年3月にCEOとなったThomas Caulfield博士であるとしており、リリースにも「Caulfield博士の定めた新しい会社の方向性に沿って、GLOBALFOUNDRIESはポートフォリオを改革した」と説明されている。ただ現実問題としてどういうことかと言えば、7nmプロセスがモノにならなかったという話だと思われる。同社は2017年6月、7nmプロセスの量産体制を2018年上半期に確立し、下半期に量産開始という計画をアナウンスしたが、これが実現できなかったのだろう。

AMDの話題に戻るが、2018年6月のCOMPUTEXの時点で、AMDは7nm Vegaのカスタマ向けエンジニアリングサンプルの出荷を開始したことをアナウンスしている。そのため2017年末、もしくは2018年の早い時期にTSMCの7nmプロセスでの製造をスタートさせたということになる。

裏返せば、AMDは少なくとも2017年3月、下手をすると2016年末にはVega 7nmにはGFではなくTSMCを使う、という決断を下したことになる(最近は配置配線を含む物理実装に1年近く要する)。つまり、この時点でGFの7nmには何らかの問題があって、AMDの量産には適さないという判断が下されていた訳だ。ただGFはその後も7nmの改良(なのか改修なのかは判らないが)を続けたものの、そろそろ見切りをつける時期が来た、という判断が下されたというあたりが実情ではないかと思われる。

ちなみにGFの7nm FinFETは、もともとはIBMが開発していたものであり、2014年10月にGFがIBMの半導体事業を丸ごと買収したことでGFに移管されたものである。IBMは引き続き開発を続けており、2017年には5nmのプロセスの開発にも成功。こうした技術はGFにライセンスされ、製造に利用されるという予定になっていた。

これを前提にIBMは、2014年から5年間で30億ドルを技術開発に投資するという話になっていたのだが、今回の決定でこの辺りが宙に浮いてしまう事になる。この辺をどう着地させるのかは今のところはっきりしない。また先のレポートにもあるが、同社は第二世代7nmに向けてASLMからEUVリソグラフィ2台を導入してFab 8に設置しているはずだが、これも今回の決定でどうなるのかはハッキリしない。

ハッキリしたのは、これでまた先端プロセス開発レースから1社が脱落したということだ。現在残っているのはTSMCとSamsung、それとIntelである。この手の話の場合、プレイヤーが少なくなるほど開発の難易度が増す(そして難易度が増すのでプレイヤーが脱落する)訳で、益々先端プロセスの開発が困難になってきた事を物語っていると言えるだろう。