2008年7月11日、日本で初めてのiPhone「iPhone 3G」がソフトバンクモバイルから発売されてから、ちょうど10年が経ちました。それ以降、国内の主要3キャリア(NTTドコモ、KDDI、ソフトバンク)すべてでiPhoneが扱われるようになり、今日では日本で50%を超える圧倒的なシェアを獲得するほどの国民的ヒットになったのはご存じの通りです。
ところが、「iPhoneが日本でこれほど独占的に売れたのは、ほかのAndroidスマホよりもiPhoneを優先的に、しかも安く販売するような条件を設けるなど、アップルが主要3キャリアに圧力をかけているからだ」といった指摘を耳にすることがありました。
この点は、公正取引委員会(公取委)も「公正な取引を阻害している疑いがある」と関心を示し、2016年10月から審査が行われてきました。その結果が7月11日に公取委から公表され、「大半の点については独占禁止法の疑いなし、一部についてはアップルが契約を改定したため疑いなし」と認められて審査が終了。晴れて、独占禁止法違反の疑いが解消されました。
大きく分けて4つの点が指摘されていた
今回、アップルと主要3キャリアの間の契約で取引の公正さに問題があると指摘されていたのが、「アップルに注文するiPhoneの数量」「iPhoneの利用者に提供する料金プラン」「利用者から下取りしたiPhoneの用途」「iPhoneの購入者に提供される端末の購入補助」の4点です。
「アップルに注文するiPhoneの数量」は、iPhoneの販売台数にノルマが課せられていて、ほかのAndroidスマホの販売機会を減少させることになるのでは……という内容です。公取委の調べでは、一部の年については注文の数量が定められていたことが確認できたものの、その台数の注文を義務づけるものではなく、達成できなくても契約違反に問われなかったため、問題点はないとされました。
「iPhoneの利用者に提供する料金プラン」は、アップルが各キャリアにiPhone専用の特定プランを用意させ、アップルが決めた基本料金や通話料金、データ通信料金などの適用を強制していたのでは…という内容です。実際は、iPhoneプラン以外の料金プランも提供できる状態になっており、こちらも問題点はないとされました。
「利用者から下取りしたiPhoneの用途」は、主要3キャリアがユーザーから下取りしたiPhoneの利用用途をアップルが定めていて、国内の中古市場に出回らないようにしていたのでは…という内容です。ある1社のキャリアに対しては、下取りしたiPhoneは自社の利用者に提供する端末補償サービスのみに使うこと、という規定が設けられていましたが、公取委の審査開始後にアップルがその規定を廃止したことで、問題点はないとされました。
「iPhoneの購入者に提供される端末の購入補助」は、NTTドコモの「月々サポート」などに代表される毎月の割引サービスをiPhoneの購入時には必ず適用する、という内容です。この仕組みが国内でのスマートフォンの普及を促してきたと評価するいっぽうで、多様な料金プランの提供を阻害する要因になる、ということが問題になり得ると指摘されました。実際、毎月の割引サービスがない代わりに月々の利用料金が安く済むKDDIの「ピタッとプラン」は、アップルとの契約が存在したことから、サービス開始直後しばらくはiPhoneは対象外とされていました。
しかし、公取委がその点をアップルに問題だと指摘したところ、アップルは割引サービスがないプランでもiPhoneを選べるように改定し、主要3キャリアとも合意を得ました。このことから、独占禁止法違反の疑いが解消されたと判断されました。
新iPhoneは2つのプランから選べるようになる?
今回の公取委の発表を受け、主要3キャリアのiPhoneは「端末の購入補助がある従来型のプラン」と「端末の購入補助がない新プラン」の両方で購入できるようになるでしょう。前者は、最新のiPhoneを手ごろな価格で入手しやすくなるメリットが、後者は買ったiPhoneを2年以上使いたいと思う人は月々の料金が安く済むメリットがあります。個々のユーザーの考えや使い方に合った最適なプランでiPhoneが購入できるので、私たち消費者にとってはよい結果になったといえるでしょう。
主要3キャリアとも、まだ新プランに対して具体的な発表はしていません。新プランの展開には準備や検討の期間が必要なことを考えると、今年秋と予想される新しいiPhoneの発売タイミングに合わせる可能性が高いといえます。新iPhone、今年は例年以上に注目を集めることになりそうです。