「5月2日に、新生FCCLのDay1がスタートしてから最初の1カ月は、とても長い期間に感じた」――。富士通クライアントコンピューティング(FCCL)の竹田弘康副社長兼COOは、最初のひと月をこう振り返る。

  • 竹田弘康副社長兼COO

■新生・富士通クライアントコンピューティングの挑戦
第1回】 【第2回】 【第3回】 【第4回】 【第5回】 【第6回】 【第7回】 【第8回】 【第9回】 【第10回】 【第11回

経営スピードが格段にアップ

長く感じた理由は、これまでには経験がないほど多くの経営判断を短期間に行い、さらに、新たな契約を結ぶ作業などに追われ続けたからだ。

たとえば、レノボ傘下になったことで、竹田副社長が担当する「調達」ひとつをとっても、レノボ、富士通、そして取引先と、新たな契約を結びなおす必要がある。そこにおいても、数多くの判断と、契約という作業を処理しなくてはならなかった。

「最初の1カ月間は、さまざまなことが起き、多くの物事を処理した。レノボ本社側からも、短時間で判断を求められることも多かった。裏を返せば、格段に経営のスピードがあがったともいえる。とくに、レノボとの接点にいた経営層や現場の社員は、そのスピードの違いを目の当たりにすることになった。レノボからの返答はすぐにやってくる。自ずと意識や仕事の仕方を変えざるを得ない状況にあった」とする。

FCCLは、2016年2月に富士通100%子会社として分社化した。

その時点で、経営層4人が合意すれば、すぐに判断して、新たなものに踏み出せる体制となり、経営スピードは格段にあがった。また、積極的な判断もできるようになった。そして、底力を出してやるという意地も社員のなかに生まれていた。その成果は、店頭向けデスクトップPCでシェアナンバーワンを獲得したり、世界最軽量のノートPCを投入したりといったことにつながっている。

だが、レノボのスピードはそれ以上のものだった。

レノボの年間売上高は453億5000万ドル(約4兆9600億円)という規模を誇る。年間出荷台数は5,500万台規模にも達する。それでも、その10分の1以下の出荷台数しかないFCCLよりも経営のスピードが速い。

富士通グループの文化のなかで育ってきたFCCLの経営陣にとって、これがグローバルクラスの企業のやり方であることを、身を持って体験したのだ。

富士通グループを抜けて「できること」が増えた

竹田副社長は、レノボ傘下になって、もうひとつ感じたことがあったという。それは、FCCLが、さらに独自性を持った判断ができるようになったことだ。

「富士通グループのなかにいたときに、PC事業が強くなるための施策があったとしても、グループ全体の戦略を優先するために、なかなか手を打てないということがあった。富士通の100%子会社として独立したことで、独自で判断できることが増えたが、レノボ傘下になってから、その姿勢がさらに加速している」とする。

  • レノボ、富士通、DBJによる新体制(レノボとFCCLがPC事業提携を発表した、2017年11月のプレスリリースより)

レノボは、FCCLの独立性を前提としたジョイントベンチャーを推進することを決定。オペレーション体制や、開発、生産などのモノづくりの体制は、富士通100%子会社時代と一切変わっていない。製品ポートフォリオも継続している。

その独立性を維持した上で、会社をさらに成長させるための施策を積極的に打てるようになったというのだ。日産自動車やシャープの再生も、外資系企業の経営者によって実現されたのは周知の通りだ。

竹田副社長は、「企業には、会社をよくするための施策が必ず存在する。だが、それが実行できるかどうかは別の話である」とする。