■新生・富士通クライアントコンピューティングの挑戦
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富士通クライアントコンピューティング(FCCL)は、「人に寄り添う」コンピューティングを実現する企業を目指すという。では、人に寄り添うコンピューティングとはなにか。2つの取り組みを通じて検証してみたい。

少数納品でもアイコン・壁紙を個別カスタム

ひとつは、ユーザーの声を反映した柔軟なカスタマイズだ。FCCLでは、法人向けに「カスタムメイドプラス」という仕組みを用意し、ユーザーの要求にあわせた仕様や設定でPCを納品するサービスを提供している。

50台、100台といった単位で導入する法人ユーザーを対象に、CPUやメモリの選択はもちろん、個別にソフトウェアをインストールしたり、ネットワークやメールの設定を工場出荷時点で行い、これを短期間に、必要なときに、必要な台数を、必要な場所に、納品することができる。

デスクトップのアイコンや壁紙をユーザーの要求にあわせて設定できるほか、天板に会社のロゴを印刷するといったカスタマイズにも応じている。各社ごとに独自の仕様にしたり、事前設定したりといったPCやタブレットを導入できるようになり、システム担当者や現場のユーザーがセットアップのための時間を削減できたり、必要な台数だけ納品してもらえるため、すぐには利用しないPCの保管場所を確保しなくて済むといったメリットも生まれる。

これを実現できるのは、開発、設計、生産のすべてを国内で行っているFCCLだからこその特徴だ。

  • 法人向けカスタマイズサービスでは、インクジェット印刷や3D昇華転写印刷などで天板にロゴやデザインを印刷できるサービスを提供している

現場の声で改良を繰り返した生保向けタブレット

だが、FCCLで取り組んでいるのは、こうした仕様変更や事前設定サービスだけに留まらない。

たとえば、FCCLは生保分野で高いシェアを持っているが、これも「人に寄り添う」ことを具現化した結果だといえる。同社が、保険のセールスレディが持つタブレット、PCなどの市場においては、74%という圧倒的シェアを持つのはその証だ。大手生保各社が、数万台単位でFCCLのタブレットなどを導入しており、この分野では、まさに標準機ともいえる水準だ。

  • 生命保険業務向けタブレット「ARROWS Tab V727/S」。日本生命は約1万名の職員向けに同タブレットを導入することを5月17日に発表した。2019年4月から、この端末を使った業務を開始するという

2018年5月には、生保最大手の日本生命が、全国約5万人の営業職員と、約1万人のお客様サービス担当職員向けタブレットとして、「FUJITSU Tablet ARROWS Tab V727/S」を導入すると発表したところだ。

ここでは、ビジネス文書の基本サイズであるA4サイズの資料をそのまま表示できる12.3型WUXGA+およびアスペクト比3:2の画面を採用しているため、外出先でも、誰でもが見やすいサイズで保険商品の紹介が可能であるほか、本体質量約800g、薄さ8.9mmの軽量薄型によって、持ち運びが手軽になり、ロケーションフリーの働き方をさらに促進できるという。

  • 5月16日に開催されたFCCLの記者会見でも、営業職(生保分野を想定)において、働き方をサポートするタブレット製品がアピールされた

実は、FCCLのタブレットは、日本生命向けをはじめとして、現場の声を反映して、開発、設計を行い、さらに改良を加えてきたものだ。

FCCLの齋藤邦彰社長は、「保険セールス向けタブレットは、セールスレディがお客様の前で、軽やかに、凛と振る舞えることを目指した商品。出社からはじまり、社内での作業、アポイントメント、事務処理など、一日の行動を見つめ直して開発した」と語る。

高速起動や軽量化によって、生命保険会社の営業職がお客様と接するときに、相手を待たせることなく商品説明できたり、グリップエッジをつけて持ちやすく、落としにくくなるよう設計。さらに、保険商品の契約時に写真撮影をする場合にも、撮影しやすいような場所にカメラを配置した。そして長時間駆動の実現や予備バッテリーの装備によって、契約作業という大切なタイミングに電源が切れてしまうことがないようにした。

「繰り返し細やかな改良を加えた成果であり、いつでも、かんたんに、安心して使ってもらえる自信作である」と胸を張る。そして「FCCLには、現場に足を運び、築き上げてきたことで生まれた製品が数多くある。それが、お客様に受け入れられている」とする。

だが、現場に足を運んで生まれた製品は、保険セールス向けタブレットだけではない。小学生向けタブレットも同様だ。