実技講習では二人一組になって、車いすを押す人、乗る人を交代しながら体験していた。約10cmほどの段差が設けられ、人を乗せたままそれを乗り越え、そして段差から安全に降りる練習が繰り返された。街中には歩道など、10cmほどの段差は至るところにある。それを考えると実践的な練習といえる。
印象的だったのは、段差を乗り越えたり降りたりする際に、乗っている生徒から「コワイ」という声が聞こえてきたこと。講師いわく「コワイと思わせないように車いすを押すのが大切」とのことだ。このほかにも、視覚障害者を想定し目隠しをした生徒をイスに座らせたり、階段を上り下りする訓練が行われた。
なぜ車いすの講習に参加したのか
講習後、学生にお話をうかがう機会を得た。今回、この活動に参加した理由を問うと、大学1年生の男の子は「大学のボランティア団体に入会していますが、ペットボトル集めやゴミ拾いがメイン。人に接することのできるボランティアを体験したかったです」と話す。大学2年生の女の子は「公務員や鉄道会社といった公共の仕事を目指しています。ボランティアを体験しておけば、そうした仕事に就きやすくなるかもしれないと思いました」と笑みをみせた。
就職に有利になるかもという打算もみえたが、筆者はそれでいいと思う。現行では50人以上の民間企業は2.0%の割合で障がい者を雇用しなくてはならない。国や地方公共団体は2.3%だ。それが段階的に引き上げられ、平成33年にはそれぞれ2.3%、2.6%に引き上げられる。
こうした方々が安心して社会で活躍するために、サービス介助士の存在は心強く、介助士が企業に身近にいるのといないのとでは、安心感が異なってくるだろう。就職に有利になるかもというのが動機であっても、いざ車いすを動かしたり、困っている方に適切なコミュニケーションが行えたりするスキルは身につけておくべきだと思う。
今後も、こうした学生が増えていくことに期待したい。