「小学生向けタブレットは、何度も学校に足を運んで、子供たちや先生から改良のヒントをもらった」と齋藤社長は語る。「踏まれたり、蹴られたり、落としたり、場合によっては頭の上に載せてみたりといろいろな使われ方をしている。教室だけでなく、体育館に持ち運んで使うなど、持ち運んだり、立ったままで使われたりするシーンは意外に多い」と現場の過酷な利用環境を示した。

  • 富士通の文教向けタブレット「ARROWS Tab Q508」

小学生向けタブレットでは、四隅には持ちやすいようにグリップがついているほか、落としても衝撃を和らげるように、随所に堅牢性を向上するための工夫を施している。また、机の上に教科書やノートと一緒においても、邪魔にならないサイズと、机から少しはみ出しても落ちにくいように重心バランスに配慮するなどの設計面でのこだわりもある。

「タブレットが壊れてしまっては授業にならない。多感な小学生に思うままに使ってもらい、学ぶ姿勢そのものを育んでもらえるタブレットを実現した」と齋藤社長は語る。

その結果、小中学校向けタブレット/PC市場では66%を獲得。3台に2台がFCCLのタブレットおよびPCとなる。

  • 富士通の文教向けタブレットPCでは、保守サービスを容易にし、かつデータを保護するため、eMMCだけ別基板になっているものがある。これも現場から生まれた要望に沿ったカスタマイズといえるだろう

  • タブレットを持ち運ぶキャリングケースも、タブレット本体の進化に合わせ改善してきた。最新版のキャリングケースには手さげが付いている

齋藤社長は、「これらの市場において、高いシェアを獲得していることからもわかるように、私たちの製品は、働く女性にも、小学生にも認めてもらっている。これは、愚直な観察とモノづくりを繰り返してきた成果である。使う人の困りごとだけでなく、気持ちや立場を理解して磨き上げてきた結果である。それにより、人の行動を、より自由に、個人らしく振る舞えることを可能にした」とし、「これが『人に寄り添う』という意味である」と定義する。

実はカラオケ「DAM」用のポータル端末も作っていた

FCCLのタブレットは、実は特定用途でさらに踏み込んだカスタマイズも行っている。

その最たる例が、全国ナンバーワンのカラオケ店舗数を持つ「ビッグエコー」を展開する第一興商が導入している通信カラオケ「DAM」向けポータル端末だろう。

  • 「DAM」向けポータル端末。ARROWS Tabをベースにした防水端末で、誤って飲み物をこぼした時も対応する

Android搭載のARROWS Tabをベースに、DAM向けの専用端末として開発した製品だが、老若男女の誰でもが使いやすい操作性や快適なタッチ操作を実現する一方、履歴や全国のリアルタイムの歌唱ランキングから選曲できる機能を搭載するなど、新機能の付与にも柔軟に対応。そして、カラオケボックス内での飲食の飲みこぼしや落下などによる、トラブルや故障が起こりにくい端末として改良を加えた。

これも現場の声を聞き、それを製品化に反映した例であり、専用端末として作り込むほどのカスタマイズにも対応しているわけだ。

現場の声を聞き、それを開発、設計部門が製品として具現化。さらに、国内の生産拠点で製造するという仕組みがあるからこそ、実現できるFCCLならではの仕組みだ。

FCCLが「人に寄り添う」という言葉を使う理由もここにある。

言い換えれば、その言葉を使うことができる唯一のベンダーであるということもできるだろう。だが、こうした取り組みとは別に、FCCLは「人に寄り添う」コンピューティングの実現に挑んでいる。