そんなシリコンバレーを相手に、どう日本は戦っていくのか。

IT企業の規模の格差や昨今の中国勢の伸びなどから悲観論も多く見られるが、「日本人だからできない、ということを逐一上げていたらキリがない」と傍島氏は言う。例えば、言語の壁についても、前述の傍島氏の体験談を引用すれば、「とりあえず英語を話せるかどうか」という問題以上に、細かいニュアンスの問題もある。

「だからできない、というのは違うと思うのです。私たち日本人は、できない理由を並べがちだと思うのですが、こちらの人々は『どうやったらできるのか』という考えをとことん詰めてくるのです。あと一歩の発想力と、技術力という面では、日本も決して劣っていないはず。マインドをどれだけ前に向けていけるかが重要」(傍島氏)

メルカリやスマートニュースなど、日本でも大きなシェアを持つアプリが、シリコンバレーにも拠点を構えて進出している上に、傍島氏らKDDI ∞ Laboとして支援してきたスタートアップ企業の起業家たちも「シリコンバレーに何人か来ている」という(傍島氏)。

日本でも起業を容易にして、新しい事業の芽を見出そうという取り組みは多く見られる。社内起業家制度は、ソニーやパナソニックといった大手電機メーカーがスタートさせており、政府も法人の設立手続きをネットで一括申請できるようにする仕組みを、2019年度からスタートさせると言われている。

「失われた20年」によって、傍島氏が語った「できない理由を並べる」ことが当たり前になった感もあるが、よりオープンに、迅速に、新しいことをどんどん進めようという環境が日本でも整いつつある。KDDIは4月に、オープンイノベーション推進企業として知財功労賞の経済産業大臣表彰を受賞したが、その先駆者としてのポジションに甘んじることなく、よりドライブできるのか。シリコンバレーからの新風を、KDDIがいかに取り込めるかが大きな鍵となりそうだ。