議論は再び「縛り」へ、鍵を握る公正取引委員会

加えて今回の有識者会議では、サブブランドに関連する問題だけでなく、中古端末の国内における流通量が増えないという問題や、いわゆる「2年縛り」に関する問題にまで議論が及んでいた。サブブランド優遇問題の追求で思うような成果が出なかったのに加え、全体的に議論が拡散したことで主題が見えにくくなったというのも、報告をまとめるのに時間を要した大きな要因の1つと考えられる。

  • 第1回会合における総務省資料より。今回の議題はMVNOとサブブランドとの公平性だけでなく、「2年縛り」や中古端末に関する問題など、議論テーマが多岐にわたっていた

では今後、総務省は公正競争の実現、ひいてはMVNOの再活性化のため、どのような点に注力していくと考えられるだろうか。今回の議論や報告書案の内容から察するに、再び“縛り”の問題に注力してくる可能性が高いと筆者は見る。

実は今回の有識者会議では、キャリアのサブブランド優遇に対する疑念だけでなく、大手キャリアが下取りした端末の国内流通を制限しているのではないかという疑念も、多くのMVNOからなされていた。だが大手キャリアの側は、ヒアリングで下取り端末の国内流通を制限していないと回答。それゆえ国内流通促進のためには、中古端末の取引をしやすくする市場の形成や、端末の修理とそのために必要な部品の供給など、他の課題の解決が必要であることが見えてきたのだ。

それゆえ総務省は再び、現在もなお顧客に大きな影響をもたらしている、2年縛りの問題に目を付け始めたといえる。実際今回の報告書案でも、「2年契約満了時点又はそれまでに、違約金又は25か月目の通信料金のいずれも支払わずに解約できるよう措置を講ずることを求めることが必要と考えられる」との記述がなされており、2年間の縛りを前提としたプランを重視する大手キャリアの対応を、引き続き問題視している様子がうかがえる。

また総務省は、4年間の割賦を前提に端末を購入する代わりに端末代金を値引く、いわゆる「4年縛り」に関しても、顧客のスイッチングコストを上昇させる販売手法であるとして、問題視する動きを強めているようだ。そしてこの4年縛りは、公正取引委員会が4月13日より実施している「携帯電話分野に関する意見交換会」でも、1つのテーマとして議論がなされている。

総務省は今後、販売店での不正なキャッシュバックなどに関して、独占禁止法に抵触する可能性がある事案を認知した場合は、公正取引委員会に情報提供するなど、公正取引委員会との連携を強め大手キャリアの端末販売手法などに関する問題を対処していく考えを示している。それだけに今後、携帯電話市場には総務省だけでなく、公正取引委員会も大きな影響を与えることになるかもしれない。