米Appleは4月19日 (現地時間)、iPhoneを自動分解するロボットの第2世代システム「Daisy」を公開した。また、アースデイ (4月22日)の取り組みの1つとして、米国などで4月19日〜30日に下取り/リサイクル・プログラム「Apple GiveBack」を利用すると、同社がデバイスごとに非営利団体「Conservation International」に寄付を行うことを発表した。

Appleは2016年3月にiPhone自動分解ロボットの初代システム「Liam」を公開した。iPhone 6を短時間で分解し、正確に部品を分類して再生利用できるようにする。例えば、iPhone 6のアルミニウム筐体を溶解して作られたアルミニウム合金がMac miniに用いられている。

Daisyについては「より効率的な分解工程で価値のある素材を回収できる」と説明している。1時間に最大200台のiPhoneの分解が可能。この分解ペースはLiamを下回るが、Liamが分解できるのはiPhone 6のみだ。対して、DaisyはiPhone 5からiPhone 7シリーズまで9モデルの分解に対応する。512techによると、29台のロボットで構成されるLiamが約100フィートもの長さだったのに対して、Daisyは5台のロボットで33フィートに収まっており、同じ空間にLiamよりも多くのDaisyを設置できる。今はテキサス州オースティンで稼働しており、次にオランダのブレダ、来年にはiPhoneの流通量が多い地域を中心におよそ10カ所に設置を増やす計画だという。

  • 第二世代のiPhone自動分解ロボットシステム「Daisy」

    第2世代のiPhone自動分解ロボットシステム「Daisy」

Appleの自動分解ロボットシステムの開発は、サプライチェーンの「クローズドループ」という究極の目標を目指した取り組みだ。従来のサプライチェーンは線状である。天然の原料を採掘して加工、製品を製造し、多くの製品はユーザーが使用した後に電子機器廃棄物として処理される。

  • 線状だったサプライチェーンをクローズドループに

    採掘、加工、製造、廃棄まで線状だったサプリチェーンを、再利用とリサイクルによって循環利用に変える

天然資源は有限であり、線状のサプライチェーンでは廃棄物が増える一方だ。そこで、ユーザーが使い終わった製品を回収し、リサイクルされた素材や再利用可能な資源のみを使って製品を作る。使用済みの製品が再び加工へと戻る循環になるから「クローズドループ」である。

有限な資源の使用を抑えられれば、供給に左右される素材の調達リスクを軽減できる。加えて、環境への影響を抑えられるクローズドループは、電子機器メーカーの理想と言える。だが、実現するのは非常に難しい。リサイクルにはコストがかかり、十分に効率化しないと、その費用が製品の価格を押し上げてしまう。だからといって、安易なリサイクルでは再利用素材の品質が劣化する。

例えば、Appleは製品にアルミニウムを多く用いている。アルミニウムは融点が低く、比較的容易に溶解してリサイクルできる。アルミニウム新地金を製造するのに比べて、リサイクル地金の製造に必要なエネルギーはわずか3%で済む。リサイクル導入による省エネルギー効果が非常に大きい。しかしながら、従来のスクラップ方式ではアルミニウム合金のみを分別しきれず、不純物が混入して品質劣化が起こるという問題があり、iPhoneのような高品質なアルミニウムを求める製品への採用が難しかった。iPhoneを回収し、正確に分解・分類した部品をリサイクルすれば、再びApple製品に用いられる高品質な素材を作れる。自動化されたDaisyなら、製品価格への影響も抑えられる。

  • 正確に分解・分類

    価値のある素材を回収できるように正確に分解・分類

  • Daisyによるパーツ処理

    TouchIDのボタンのような小さなパーツも丁寧に処理

日本では家電リサイクル法によって、米国よりもはるかに高い割合で家電製品のリサイクル回収が行われている。リサイクルが成熟した国である。だが、法律に従って回収されるサイクルでは、本当に効果的に循環しているのか、回収後に処理されたものがサプライチェーンにどのように影響しているのか分かりにくい。もしかしたらメーカーの需要がある素材に回っていない可能性もある。

Appleの場合、将来のApple製品を見据えて、それに必要な素材をリサイクルから得るためのテクノロジーと回収の仕組みを構築している。循環利用の形がはっきりとしている。レアメタルやレアアースの奪い合いになる時代に備えたビジネス戦略の1つと見る人もいるかもしれない。だが、Appleのような企業が先を行く取り組みで競争を仕掛け、社会の変化を加速させることで、それがリサイクル技術の発展と環境保護の向上という社会貢献につながる。

  • Appleとユーザーの間で価値を循環

    古いデバイスを"GiveBack"、Appleとユーザーの間で価値を循環させる

地球や環境について考える日"アースデイ"を今年も積極的に支援

米国などでスタートしたApple GiveBackは、Appleの直営実店舗またはApple.comで申し込む。査定額を申込者が受け入れたら、その額がApple Storeギフトカードで支払われる。下取り対象の製品ではなくても、Apple製品は全て無料リサイクルの対象になるので、同プログラムを通じて資源の再利用に貢献できる。4月19日〜30日には、米国においてApple GiveBackプログラムがデバイスを受け取るごとにConservation Internationalに寄付する。Conservation Internationalは、生き物の多様性の保全、豊かな自然を引き継げる持続可能な社会の実現に取り組む国際NGOだ。

他にもアースデイに関して、Apple Watchユーザーは「アースデイ チャレンジ」に参加できる。アースデイに30分以上のワークアウトを行うとバッジやメッセージ用の特別ステッカーを獲得できる。また20日から、世界各国のApple直営実店舗で、葉っぱをとり入れたグリーンのデザインに店舗のロゴを変更、またはアースデイのためのウインドウ・ディスプレイを掲示する。

  • 2018年のアースデイバッジ

    アースデイは外に出て30分ワークアウトしよう!