そんなこんなで、α9は発売当初よりもコンティニュアスAFの動作が確実に良くなっているということで、ここにきてやっと私はマジでα9が欲しくなってきちまいました。でも一方で、「どうせ買うならα7R IIIの方がいいかなぁ」という気持ちも払拭できないでいた。なんてったって、万能性は明らかにα7R IIIの方が上。操作系も、個人的には「α9以外のインターフェース」の方がαにはお似合いだと思っている。「サイレントで動体を撮る」ことを重視しないのであれば、買うべきはα7R IIIとの判断にも相応の説得力があるというワケだ。

で、実際についこの間、購入に踏み切ったのはα7 IIIだった(あれ?)。我ながら、この怒濤の展開には人生の機微に触れた気がしたっつぅかナンつぅか(笑)。フルサイズミラーレスであることを前提に、画素数、最高秒間コマ速、そして実売価格の3要素において飛び抜けたバランスの良さを有しているところにクラクラッと目眩がして、気がついたらポチッてたんだよなぁ。まるで、お、俺が悪いんじゃねぇ~とでもいいたげな書き方をしてますが。

フルサイズαに対して揺れ続ける思いをピタッと止めたのが、ベーシックモデルを標榜するα7 IIIだったというのがジツに美しい。私もそんな、派手さはないけどジワリと人の心を掴んで離さない「ベーシックなインフルエンサー」になってみたいものです。いや、マジで。

  • いざ動体に向かえば、最初のピントのつかみはもちろん、その後のピント追従に関しても一眼レフにまったく見劣りしない手応えが得られるα9。総合的な動体対応能力はミラーレス機、随一である(FE 100-400mm F4.5-5.6 GM OSS使用、ISO2000、1/2000秒、F5.6、-0.7補正)

  • 高速性や動体ゆがみとほぼ無縁のまま活用できるサイレント撮影ばかり注目されがちなα9なのだけど、フルサイズの2400万画素ということで「写り」そのものもかなりハイレベルであることを忘れてはいけない(FE 70-300mm F4.5-5.6 G OSS使用、ISO1600、1/640秒、F5.6、-1.7補正)

  • 実際にはピントが合っていないのにカメラ自身が堂々と「合焦した」と誤った判断してしまう確率が、一眼レフの“別体位相差AF”との比較で明らかに多いことについては、まだその傾向を完全に排除するには至っていない。コントラストAFとタッグを組む像面位相差AFが抱えている目下、最大の弱点はそこだと思う。この作例の場合も、何度も偽合焦を繰り返した。低輝度、低コントラストは大敵(FE 70-200mm F2.8 GM OSS使用、ISO12800、1/25秒、F4.0)

  • 電子シャッターで激しく動く動体を撮るという条件の下、その使い勝手と結果に関し、α9の右に出るカメラは現状、存在しないといえる。画角内に広く分布する測距点のおかげで、動体撮影時の画面構成にきわめて高い自由度が得られるのもありがたい(FE 100-400mm F4.5-5.6 GM OSS使用、ISO800、1/2000秒、F5.6、-1.7補正)

著者:落合憲弘
「○○のテーマで原稿の依頼が来たんだよねぇ~」「今度○○社にインタビューにいくからさ……」「やっぱり自分で所有して使ってみないとダメっしょ!」などなどなど、新たなカメラやレンズを購入するための自分に対するイイワケを並べ続けて幾星霜。ふと、自分に騙されやすくなっている自分に気づくが、それも一興とばかりに今日も騙されたフリを続ける牡牛座のB型。2018年カメラグランプリ外部選考委員。