「世界中の情報を整理してアクセスできるようにするという理念は Google のすべての事業やプロジェクトに共通するもので、Womenwill もまったく同じ理念のもとに運営されている」 - 山本氏は Google における Womenwill の位置づけについてこう語っている。

Womenwill の以前から、Google は世界中で女性支援の活動を行ってきているが、それらは単なる慈善事業ではない。女性の活躍を妨げている要因があるなら、それを可視化し、問題解決のための仮説を立て、ツールを駆使して検証していくことで、女性の社会進出をバックアップし、ひいてはテクノロジの発展にもつなげていく - Womenwill は間違いなくGoogle の理念にもとづいたミッションだといえる。

同じ Womenwill でも、国によって取り組んでいる内容は異なってくる。たとえばインドネシアでは「女性の起業家を増やす」ことにフォーカスがあたっており、インドのある地域ではスマートフォンを使えない女性たちにその使い方を教える女性のトレーナーを増やす試みがなされているという。

ただし、共通しているのは「女性の社会進出を支援するという潮流が世界中で大きくなっているということ」だと山本氏は強調する。その裏には、Googleとして、「テクノロジーの力で世界の課題を解決できる」と信じているからだ。だからこそ、国や地域によって若干の違いはあれど、女性が社会で活躍することを支援するという世界的なうねりが生じている現在、最先端テクノロジー企業の Google がそのトレンドをツールで後押しするのは、ごく自然なことだろう。

実際、トライアルに参加した企業からは「働き方改革といえばこれまで人事の仕事だったが、いまはツールと紐づけて考えるようになった」という声があるという。これは Google だからこそ挙げられた成果だといえる。また、男性である山本氏が日本の女性支援プロジェクトを統括しているという点も、ダイバーシティを掲げる Google ならではのユニークな取り組みだ。

「男性が女性支援プロジェクトに関わることで、多様な視点が得られるはず。また、女性の働きやすさは男性の働きやすさにもつながると信じている。本質的に働く能力に性差はなく、テクノロジの恩恵は誰もが受けられるべき。こうした取り組みは女性の変化だけでなく、男性側の変化も見ていく必要がある。我々は一緒に変わっていかないといけない」(山本氏)

世界でもっともイノベーティブと呼ばれる企業の代表である Google がテクノロジでもって女性の柔軟な働き方を支援することは、Google のミッションに照らし合わせても納得がいく。だが山本氏はもうひとつ、Google がこのプロジェクトを推進する意義があるという。

「Google に入社して驚いたのが、誰もが"自律的"に働いているということ。逆にいえば、自分で自分の課題を見つけ、トライ&エラーを繰り返していかなければこの会社で仕事はない。もちろん上司から業務を命じられることはあるが、どうやってそれを実現するかは自分自身で考えなくてはいけない。セルフスターターであること、これが Google で働くのに絶対に必要な条件」(山本氏)

この言葉には、Womenwill もまた、参加する企業や従業員が"自律的"にかかわることの重要性が含まれている。これまで、働き方改革といえば時短にフォーカスがあたりがちで、それは人事が解決すべき問題として片付けられることが多かった。本来は自分たちの問題のはずなのに、どこか他人事で、いわゆる"ノー残業デー"に関しても「人事に無理やり押し付けられた」と不満に思っている向きも少なくないはずだ。

だがそうした他人事の姿勢は Womenwill には適さない。女性の問題は男性の問題でもあり、女性が働きやすい環境は男性にとっても働きやすいはず――山本氏が何度も繰り返したように、女性の社会進出を阻む要因を男性も一緒に自分の課題として取り組んでいくところにも、Google が主導するプロジェクトとしての意義がある。

Womenwill は Google にとっても"トライ&エラー"の繰り返しだった。その積み重ねがようやく一定の成果となって世の中にあらわれ、多くの賛同企業が日本にも生まれている。

「はじめは小さな取り組みでもかまわない。適用できる部署、適用できる人々からでもいいので、まずはトライしてみてほしい。働き方の意識が変われば、必ず時間やコストの効率化は進む。日本の企業にも着実に変化が訪れていることを実感している」と山本氏は最後にこうコメントしている。

変わるべきなのは女性の働き方だけではない。未来の働き方を変えるのは、現在のすべての人々による"自律的なトライ&エラー"だということをWomenwill は教えてくれている。