理化学研究所(理研)が、任期なしの無期雇用研究者を2024年度末までに4割程度まで増やすことを盛り込んだ新たな「中長期計画」をまとめた。松本紘理事⻑が5日、記者会見して公表した。無期雇用研究者の大幅増員は、若⼿研究者に⻑期間安定して研究に取り組める環境を与えて優れた成果を上げてもらうのが狙い。現在多くの研究機関で研究者の雇用制度見直しの議論が行われており、理研の方針が注目されている。

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    写真 記者会見する松本紘理事⻑(理化学研究所提供)

5日に発表された新たな中長期計画は、「Ⅰ.研究開発成果の最大化その他の業務の質の向上に関する目標を達成するためにとるべき措置」「Ⅱ.業務運営の改善及び効率化に関する目標を達成するためにとるべき措置」「Ⅲ.財務内容の改善に関する目標を達成するためにとるべき措置」「Ⅳ.その他業務運営に関する重要事項」の4章で構成されている。理研の中長期計画公表に先立ち、文部科学大臣が3月1日付で理研の7年間にわたる「中長期目標」を策定しており、中長期計画はこの中長期目標を受け、目標達成のための具体的施策を多く盛り込んでいる。

中長期目標では、「若手をはじめとする研究者等が、中長期的視点を持って研究に専念出来るよう、研究者等の任期の長期化や一部の無期雇用化を含む、人事制度の改革・運用を行う」と明記してある。理研の中長期計画では「中長期的に進めるべき分野等を考慮し、公正かつ厳正な評価を行ったうえで、無期雇用職として任期の設定がなく研究に従事できる環境を提供することとし、対象となる研究者の割合を4割程度まで拡充する」とした。また任期制研究者についても「研究に従事できる期間を原則7年とする」としている。

理研には現在約3,000⼈の研究者がおり、計画が実行されればかなりの数の無期雇用研究者が誕生することになる。理研はこうした新たな人事制度導入で優れた研究者を集め、結果として世界レベルの優れた成果を上げることを期待している。

新中長期計画のうち、人事制度関係では、高度な研究支援業務を担うコーディネーター(リサーチアドミニストレーター)の登用や、仕事と家庭の両立支援制度の拡充、さらに従来の計画にもあった女性研究者、外国人研究者比率の増加方針も再確認している。5日の記者会見で松本紘理事長は「理研は質の高い研究を維持し続けるとともに、社会とのつながりを重視しつつ、理研のすべての業務について最大化を目指す」などと述べた。

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