――iPhoneで充実した見守りができる「TONE SIM(for iPhone)」は、子どもを持つ親を中心に大きな話題を呼んでいます。これまで、トーンモバイルはAndroidスマホで攻めているという印象がありましたが、iPhoneへの展開も当初から計画していたのでしょうか?

石田社長:かつてトーンモバイルを設立した際、いくらTSUTAYAブランドがあるといっても、MVNOの事業は厳しい戦いになると見込んでいました。CCC(カルチュア・コンビニエンス・クラブ)の増田宗昭社長と「まず子ども向けの商品で勝ちに行く」と決め、その次はシニアで勝ちに行くと、1つずつ戦略を決めて実行してきました。その3年間、レッドオーシャン(すでに血みどろの激しい争いが繰り広げられている市場)の波に飲み込まれず、独特のポジションを勝ち取れたのではないかと感じています。

3段階目の戦略は「日本人のiPhoneに対する高いニーズをどう取っていくか」と決めていました。日本において、iPhone人気はやっぱり別格なんですね。とはいえ、我々がiPhoneを作ることはできません。iPhoneと同じようなAndroidスマホを作ることは可能ですが、どんなに性能の高いスマホを一生懸命に作ってもiPhoneにはなれないんです。

iPhoneを自分で作れないとあらば、iPhoneに対するニーズをキャッチできないか、と考えました。マーケットを調査すると、「子どもは特にiPhoneが欲しい」「だけど親は子どものスマホ利用を制限したい、見守りたい」というそれぞれの考えがあることが分かりました。

  • 子どもは何よりもiPhoneを欲しがり、親は子どものスマホ利用をしっかり管理したいと思っている

もし、子どもがiPhoneを持つのをガマンしてくれれば、トーンモバイルのAndroidスマホを渡すことで丸く収まります。しかし、親が妥協しちゃうと大手3キャリアのiPhoneを買い求めることになり、端末代金や月々の料金が跳ね上がってしまいます。しかも、現在さまざまなキャリアで採用されているスマホ用のセキュリティ機能は、ほぼすべてが解除できてしまうんですよね。YouTubeを見れば、いくらでも方法が紹介されています(笑)。我々もいろいろ研究してきましたが、セキュリティ機能を普通のアプリで動かしている以上、ユーザーによる解除を防ぐのは絶対に無理なんだろうなと感じました。

そこでTONE SIM(for iPhone)では、トーンモバイルの親会社であるフリービットが持っているさまざまな特許技術を利用し、見守りアプリが動作を停止したり、アプリが意図的に削除された場合、通信を止めて実質的に使い物にならなくなる仕組みを設けました。通信とアプリを連携させることで、ユーザーに破られないセキュリティを可能にしたわけです。

詐欺電話をブロックする機能も標準で搭載

――TONE SIM(for iPhone)の機能は、Android版の見守り機能「TONEファミリー」で提供しているものと異なるのでしょうか?

石田社長:基本的な部分はほぼ同じです。セキュリティー面では、標準ブラウザーのSafariを表示させず、フィルタリング機能を搭載した独自ブラウザーに置き換えます。1日に子どもがどう移動したかや、子どもが閲覧したWebサイトのカテゴリー、ブラウザーのフィルタリングにかかった件数などのサマリーを表示する機能も備わっています。

  • iPhoneでは標準ブラウザーのSafariが見えなくなり、フィルタリング機能を備える専用ブラウザーを利用する形になる

詐欺電話対策の「あんしん電話」機能が入っているのが、他社にはないアドバンテージといえますね。データベースに加え、AIを活用して怪しい電話かどうかを判断し、怪しいと判断した場合には電話に出ないよう注意を促してくれます。

――TONE SIM(for iPhone)の見守り機能には、「かんたんモード」と「あんしんモード」の2種類が用意されているようですが、この2つの違いは何ですか?

石田社長:「かんたんモード」は、買ってきたSIMをiPhoneに挿入して必要なアプリやファイルを導入するだけで使えるようになるのが特徴です。アップルが設定した4種類の年齢別レーティングをもとにアプリの利用制限がかけられる仕組みで、例えばLINEなど特定のアプリだけを使えないようにする、といったことはできません。

「あんしんモード」ならば、アプリごとに細かく利用制限がかけられるようになります。開発自体はすでに終わっていますが、提供のタイミングや料金は未定となっています。iPhoneを好む人にとっては、SIMを差し込めば面倒な設定いらずで使えるようになるシンプルさやカジュアルさが大事だと思っていますし、多くの親御さんにとってはかんたんモードで十分だと感じていますので、トーンモバイルとしてはこちらをお薦めします。

実は、トーンモバイルで子ども用スマホを購入された保護者の方にもっともニーズが高いのが、アプリの使いすぎを防ぐことではなく、子どもの居場所確認機能(ジオフェンス)なんですよね。その次に、危ないコンテンツのフィルタリング機能が求められています。これら2つの点を完全にカバーしていることも、あんしんモードをお薦めする理由です。