本連載でも指摘してきたが、Appleがいくら時価総額トップであっても、1社ではどうしようもできない地政学リスクが存在する。それが顕在化すれば、Appleの売上高の7割を占めるiPhoneのビジネスを直撃する可能性が高い。

もし朝鮮半島で有事が発生した場合、Samsungの1社に頼るiPhone Xの有機ELディスプレイやメモリーの製造や流通が混乱し、一番の稼ぎ頭である「iPhone Xが作れない」事態が起きることは想像に難くない。これは、当面iPhone Xが有機ELディスプレイを使い続ける限り、晒され続けるリスクだ。

その次は、米中で勃発した貿易戦争だ。

トランプ大統領が「iPhoneを米国に作らせることがゴール」と、iPhoneを米国製造業の再興の分かりやすいベンチマークに設定した。同様に、iPhoneの製造や出荷に対してなんらかの制裁を及ぼすことで、中国は米国との貿易の争いで優位に立っていることを、簡単に世界にアピールできる。

Appleは、トランプ政権と間で思想の違いによる対立に終始するわけにはいかない。その一方で、自社の思想と利益を守り、現政権あるいは次期政権に向けての布石を打ち続けなければならない。

他のシリコンバレー企業がトランプ政権との間で摩擦を引き起こしている中、Appleは自己主張と交渉による折衷案の模索のためにさまざまなオプションを持つ数少ないテクノロジー企業である、と見ることができるのだ。

学校で開催された心温まるイベントと、学生時代に戻ったような体験が続いた今回のイベントだったが、Appleのしたたかな、しかし絶対にそうあるべき姿を垣間見ることにもなった。