海洋研究開発機構(JAMSTEC)や東京大学(東大)などの研究者、技術者からなる日本の海底探査チーム「Team KUROSHIO」は、AUV(Autonomous Underwater Vehicle)やASV(Autonomous Surface Vehicle)などの海中ロボットなどを用いて、超広域高速海底マッピングの実現を目指す海底探査技術の国際コンペティション「Shell Ocean Discovery XPRIZE」において、「Round2 実海域競技」(決勝戦)に進出したと発表した。

  • KUROSHIO

    会見に参加した、JAMSTEC、東大 生産技術研究所、九州工業大学、海上・港湾・航空技術研究所、三井造船、日本海洋事業、KDDI総合研究所およびヤマハ発動機からなる「Team KUROSHIO」

「Shell Ocean Discovery XPRIZE」は、水平5m、垂直50cm以上という解像度での超広範囲(500km2)の海底マッピングの実現を目指して行われるもの。決勝となるRound2では、水深4000mにおいて、250km2以上の海底地形調査、および10枚の海底ターゲットの写真撮影が求められる。

  • Shell Ocean Discovery XPRIZE

    「Shell Ocean Discovery XPRIZE」の概要。賞金総額は、700万ドル。超広範囲(500km2)の海底マッピングを、水平5m、垂直50cm以上という解像度で実現することを目標として実施される

同コンペは、「技術提案書審査」「Round1 技術評価試験」および「Round2 実海域競技」の3つの関門で構成されており、これまでTeam KUROSHIOは 2017年2月に「技術提案書審査」を通過し、2018年1月に「Round1 技術評価試験」を実施していた。今回の発表により、Team KUROSHIOを含め、全9チームがRound2の実海域競技へと出場する運びとなった。

  • Shell Ocean Discovery XPRIZE

    決勝に進出した9チーム。アジアからは唯一日本のチームのみが進出した

目指すは「ワンクリックオーシャン」

現状のAUV調査においては、ユーザー(企業や研究者)が海底の情報を得るために、AUVを開発し、所有し、運用、データ処理までを一貫して行う必要があった。それらの各工程において、高難易度・高価格という問題があるほか、現状ではAUVの運用に専用の有人支援母船が必要ということもあり、高い運用コストが問題となっている。

そこでKUROSHIOが目指すのは、ユーザーが日本からweb経由で求めるデータを注文するだけで欲しいデータを得ることのできる、「ワンクリックオーシャン」の世界の実現だ。そのために、さまざまな種類のセンサを搭載したロボットによる、完全無人調査の実現を目指す。今回の「XPRIZE」への挑戦は、このようなサービスを提供できる企業連合体を構築することを目指して行われたものだという。

  • AUV
  • 現状のAUV調査における「AUVの開発・保有、データ処理が必要」「有人支援母体が必要」などといった問題を解消し、ユーザーが「ワンクリック」で情報を得られる社会の実現を目指す

勝機はあり - 「やるからには優勝を」

JAMSTECの技術研究員で、「KUROSHIO」の共同代表である中谷武志氏は、「Roun1とRound2では、大きなルールの変更こそないものの、水深が倍になっており、難易度が上がっている。現時点でのライバルは、ドイツのチーム「ARGGONAUTS」。しかし、どのチームもまだ情報をあまり公開しておらず、あまり性能の比較ができないのが現状。ただ、KUROSHIOは運用の経験を多く積んでいることに加え、高いチーム力を持っていることから、優勝の勝機はあると感じている。やるからには優勝を目指したい」と力強いコメントを残した。

  • KUROSHIO

    「Team KUROSHIO」集合写真

なお今後のスケジュールは、2018年10月~11月にRound2が実施され、同年12月に結果発表される、という流れになっている。