2つの「チキン弁当」を食べ比べてみよう。なお、以下ではNRE大増を「NRE」、JR東海パッセンジャーズを「JRCP」と略している。

2つの会社から販売されている「チキン弁当」(上:JRCP、下:NRE)。NRE版は国鉄時代からほとんどパッケージが変わっていない

どちらもボックスタイプで、左にチキンライス、右にチキンがあるのは同じ。NRE版は、ライスにグリーンピースとともに卵そぼろが乗っているが、JRCP版は柔らかいスクランブルエッグ。チキンは、NRE版の4つに対しJRCP版は5つだが、全体の量はあまり変わらない。大きく異なるのは付け合わせで、NRE版がスモークチーズとマカロニサラダにレモン果汁、JRCP版はナポリタンとプチトマト、ピーマン、そしてタルタルソースだ。

チキンライスのテイストにも違い

チキンを食べてみよう。NRE版は、筆者が小学生の頃から慣れ親しんだ昔ながらの唐揚げだ。衣が厚めでしっとりとしており、少し粉っぽさを感じる。鶏肉には歯ごたえがあり、味付けはスパイシーながら控えめ。ライスにもビールにも合う、万人受けする味わいだ。NRE大増の担当者は、「独特の味付けをした唐揚げ粉を使い、揚げ方はもちろん、粉の付け方やはらい方にもノウハウがあります」と語った。

対するJRCP版のチキンは、やや現代風で若い人向けのテイスト。鶏肉は柔らかめで、JR東海パッセンジャーズによれば「こだわりの香辛料を複数ブレンドした独自の唐揚げ粉で揚げています」と言う。ファストフード店のフライドチキンに近い、パンチの効いた味付けと感じた。

  • 左:NRE版の「チキン弁当」900円。個別包装のスモークチーズは、以前はドライフルーツだった。唐揚げとレモン果汁だけをパッケージした「チキン弁当のからあげ」もある。右:トロトロの卵とタルタルソースで個性を出すJRCP版の「チキン弁当」880円。ナポリタンが、懐かしの洋食を演出している

チキンライスにも違いがある。NRE版は、やはり昔から変わらぬ優しい味わいで、ケチャップの主張が強すぎずほのかな甘みを感じる。JRCP版はケチャップの風味を楽しめる味付けで、さわやかな酸味が印象的だ。

歴史ある駅弁だけに、レシピを変更することはほとんどない。

「辛い料理が流行った時など、何度か味付けをリニューアルしてみたことはあります。しかし、昔からのお客様のご要望もあり、最終的には元の味に戻っています」(NRE)

「昔懐かしいチキンライスと唐揚げの味を求める50~60歳代の男性のお客様やお子様連れのお客様などに人気で、リピーターも多いため大きな商品変更は基本的にありません」(JRCP)

筆者の感想も加味すると、歴史と伝統を守るNRE版と、現代風のテイストと懐かしさを両立させたJRCP版、と表現することができそうだ。