スマートフォンやパソコンを使用していて、Googleマップを使用したことがない、という人は少ないだろう。行ったことが無い場所に行く際に、インターネットで「〇〇から△△」などと検索すると、ほとんどの場合にはGoogleマップでの検索結果が上位に表示される。
実はこのGoogleマップでは、機械学習を活用し、住所、建物の名称などの地理情報がない国のマップも作成可能だという。その方法についてGoogleは3月9日、「現場で役立つ機械学習」と題し、六本木の同社オフィスにてメディアセミナーを開催。Googleマップのソフトウェアエンジニアであるアンドリュー・ルッキングビル氏による説明が行われた。
機械学習で、地図をつくる
地理情報のない国での情報を、どう得るのか? ここでは、ストリートビューの画像がカギとなる。設置されている看板などの地理的情報をもつ画像から、情報を自動的に抽出するのだ。
これまでのGoogleマップと機械学習の進化の軌跡をたどる。
・2008年、ストリートビュー画像に写り込んだ顔やナンバープレートのぼかし加工に深層学習を活用
・2014年、第3者が公開する「Street View House Numbers(SVHN)」データセットにより、画像内から番地を読み取る技術を公開。現在、同システムを全世界の3分の1以上の住所表記の改善に活用
・2015年、「Large Scale Business Discovery from Street View Imagery」を発表。ストリートビュー画像に含まれる標識を使って、企業の名称を正確に検出する技術を公開した。店頭の標識などが検出されると、通りの名称を読み取るのに使用されるものと同じモデルでアーキテクチャが異なるトレーニングデータを使用し、会社名などを抽出する
・2016年、ストリートビュー画像から道路名などの案内標識を抜き出した大規模なトレーニング用データセット「French Street Name Signs(FSNS)」を公開
・同じく2016年、FSNSを使用し、新しいストリートビュー画像に自動的にラベル付けを行うための深層学習モデルアーキテクチャを開発。街路番号を抽出するシステムと組み合わせることで、画像から住所を直接抽出できるようになった
このように、Googleマップの便利さには、機械学習が大きく貢献しているようだ。機械学習はそのほかにも、さまざまな機能に使用されている。
「OK Google、駐車場は空いてる?」
説明会ではつづけて、同社の開発した機械学習による駐車混雑度の予測システムについての解説がなされた。
「ドライバーは、駐車スペース探しに人生の106日間を無駄にするというデータが出ている」とルッキングビル氏は語る。「駐車場がどこも満車でなかなか車を停められない」という経験はドライバーならほとんどの人が経験する問題だ。Googleはこれまた機械学習にて、解決策を探す。
同社はまず、ユーザーに「駐車場を見つけるのにどれくらい時間がかかったか?」という質問を投げかけ、複数の場所や時間帯別での実態を調査した。
そして、これらのデータを基に、モデルのトレーニングに必要な要素を決定。例えば、ユーザーが目的地まで直接運転した場合と、実際に目的地に到着するのにかかった時間を統計処理し、多数のユーザーが目的地到着までに、より長い時間を要していれば、駐車スペースの確保が困難だと予測する、といったもの。このモデルでは、約20種類の異なる要素を決定した。
また、この機能は標準的なロジスティック回帰MLモデルを利用。ロジスティック回帰の挙動はさまざまな分野ですでに検証されており、トレーニングデータのノイズに影響されにくいという特徴をもつ。さらに、モデルからの出力を「駐車スペースの確保が困難」と自然に解釈できたことに加え、それぞれの要素の影響を簡単にエンジニアが理解することができたことから、モデルが合理的に動作していることが確認できた。
なおこちらのサービスが利用可能なアプリは2017年より、Android、iOS向けにすでに提供されており、米国や欧州、南米、カナダ、アジアなどの一部地域で利用可能だ。
ここで語られたのは、あくまで機械学習を用いた一部の機能にすぎない。まだまだこれからも新たな機能が登場していくことだろう。駐車場予測の次にはどのようなサービスがリリースされるのか、機械学習の進化とGoogleマップの進化はまだまだ続きそうだ。