例えば、ファーウェイは昨年(2017年)、モバイル端末に高度なAI機能の搭載を実現するフラグシップSoC「Kirin 970」を乗せたスマホ、「Mate 10」「Mate 10 Pro」を発売しています。また、LGエレクトロニクスは、MWC 2018の開催にタイミングを合わせて、AIまわりの機能を強化した新しいスマホ「LG V30S ThinQ」を発表しています。

Galaxy S9/S9+も含めて、これらの端末に共通する特徴は、いま流行のAIアシスタントを搭載するスマートスピーカーのように、ユーザーが「○○を調べて」「○○がしたい」とコマンドを声に出して伝えなくてもよい点でしょう。スマホに搭載されているAIが行動履歴を学習しながら、ユーザーに余計な操作の負担をかけることなく、自動的にハイクオリティな写真を記録したり、サービスを楽しませてくれる「手軽さ」を実現しています。

  • MWC 2018、サムスン発表会

    S9/S9+に新しく搭載されたAR Emoji機能のデモンストレーションも好評

サムスンが発表したGalaxy S9/S9+には、大きく「カメラ」の周りと、さまざまな家電と連携する「コネクテッドライフ」を実現する最先端AIテクノロジーが注ぎ込まれています。前者のカメラ機能についてはハンズオンレポートを見ていただくとして、ユーザーがカメラの機構やフォトテクニックにうとくても、シャッターを切るだけで美しい写真・動画がいい感じに記録できてしまいます。

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    スマート家電やIoTデバイスと連携する「コネクテッドライフ」を、Galaxyが中核となって実現していきます

後者のコネクテッドライフについては、Galaxyに搭載されているサムスン独自のAIアシスタント「Bixby(ビグスビー)」が進化の鍵を握っています。いまのところ日本では、Bixbyと連携するサムスンのスマート家電や、グループ企業であるSmartThingsのIoTデバイスが発売されていません。最先端の状況を実感として伝えられないことがもどかしいのですが、欧米ではBixby搭載のスマート冷蔵庫から、音声コマンドを使ってIoTデバイスを操作するなんてことも実現しています。

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    Galaxyの新しい機種が搭載する独自のAIアシスタント「Bixby」がコネクテッドライフの進化を牽引

今回の発表会では、S9/S9+にも搭載されているBixbyの高性能なAIエンジンを活用した、スペイン語から英語へのリアルタイム自動翻訳機能などが紹介されました。特に、カメラで撮影した食事の写真に写っているオブジェクトをAIが解析し、カロリー情報などを栄養バランスの情報(「S Health」アプリに収録)とマッチさせながら、正しい食生活を手軽に管理できるスマートライフの提案が印象的でした。

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    Bixbyの自動翻訳機能。スペイン語の文字にかざすと素速く英語に自動翻訳されます

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    食品を撮影すると関連する情報につないでヘルスケアやショッピングに誘導

イベントの最後には、サムスンでモバイル機器のソフトウェアに関連する研究・開発を統括するEui Suk Chung氏が登壇。今後、VRにARといったエンターテインメントにもAIや機械学習のアルゴリズムを積極的に結びつけて、スマホ単体で直感的に楽しめるエンターテインメントの幅をさらに広げたいとコメントしました。

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    ソフトウェア開発を統括するEui Suk Chung氏

また、サムスンがネットワーク接続機能を持つエレクトロニクス製品のため独自開発したセキュリティソリューション「KNOX」も精度を上げて、Bixbyとも連携を図りながら、モバイル決済機能「Samsung Pay」を安心・便利に使えるマーケットを拡大していく戦略も語られました。Chung氏はさらに、「年内には大きな進化を遂げたBixby 2.0に関する具体像をアナウンスしたい」と予告してステージを後にしました。

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    年内にはBixbyが大きく進化する予定

これからのGalaxyシリーズは、グローバルトレンドとしてスマホ単体だけでなく、その周辺にあるエレクトロニクス機器やサービスと一緒に進化を遂げていくことになりそうです。スマホ単体で見ると大きな変化がないように見える新製品のアップデートも、例えばKoh氏が語る「コネクテッドライフ」の目線から俯瞰して見ると、いまここでとても大きな変化の波が押し寄せようとしていることがわかるのかもしれません。いよいよ26日に開幕するMWC 2018から、IT・モバイルのどんな未来が見えてくるのかとても楽しみです。