京都大学(京大)は、同大工学研究科の伊豫部勉特定准教授、防災科学技術研究所(防災科研)の平島寛行氏、新潟大学の河島克久教授らの研究グループすが、積雪の高さだけではわからない積雪荷重を知ることができ、家屋等の建造物の倒壊を防ぐ雪下ろし作業のタイミングの判断に役立つ積雪荷重計算システムを開発したことを発表した。

  • 「雪おろシグナル」積雪重量分布情報(出所:京大Webサイト)

    「雪おろシグナル」積雪重量分布情報(出所:京大Webサイト)

雪氷災害は毎年多くの死者を出しており、屋根雪処理中の滑落等、除雪中の事故はそのうち半数以上にのぼる。また、中山間地域では人手不足のため雪下ろしが困難で、雪の重みによる空き家の倒壊が後を絶たない。

防災科学技術研究所では、スイスで開発された積雪変質モデル(SNOWPACK)を改良、応用し、複数の機関で観測されている気象データや積雪深のデータを解析して積雪の重量を計算するシステムの開発を行なっている。同システムを活用して、雪下ろし作業のタイミングを適切に判断することで、雪氷災害を軽減することを目指している。また、京大と新潟大では、全国の積雪量を把握するために、Web上で公開されている気象庁や自治体等の積雪深の情報を収集して、分布図として示す準リアルタイム積雪分布監視システムを開発・運用してきた。

このたび研究グループは、同システムで収集された積雪深の情報とSNOWPACKを組み合わせて、新潟県内で観測されている積雪深から屋根に積もっている積雪の重量を推定する積雪荷重計算システムを共同で開発した。

積雪重量情報の屋根雪対策への利活用に向けて、積雪荷重計算システムを用いて推定される積雪重量分布情報を「雪おろシグナル」と命名し、新潟県で活用を開始した。雪おろシグナルは、地理院地図上に分布図として表示されるほか、積雪荷重計算サイトにおいて、特定の地域における現在の積雪量や雪下ろしを実施した日を指定することで、それ以降に堆積した雪の量から現在の積雪重量を知ることが可能となる。

これらの取り組みは、共同研究で行なってきた積雪重量分布推定手法の開発成果が、雪国の安全な生活向上のために実装される初めての事例となる。防災科研では、我が国の防災力向上に向けて今後この研究を全国に展開し、社会実装をさらに進めていくとしている。