京都大学(京大)は、生態系の劇的な変化についての分析と数理モデルを組み合わせ、生物個体数の小さな変化を追跡することで、生態系の異常や崩壊の予兆を検知するための枠組みを提示した。

同研究は、京大 生態学研究センターの門脇浩明 研究員、中央水産研究所の西嶋翔太 研究員らによるもの。詳細は、Elsevier発行の「Ecological Indicators」(オンライン版)に掲載された。

生息地の破壊や気候変動などによって、生態系が突如として劇的に変化することがあり、これを「レジームシフト」という。レジームシフトは、生態系を管理するうえでもっとも対処が難しい問題といわれている。生態系の崩壊はしきい値を伴う反応であるため、環境変化の追跡から崩壊を予測することが難しいことが原因だ。また、一度失われた生物群集は環境条件を改善しても回復しづらいため、崩壊後の対処も難しいという側面もある。しかし、レジームシフトの予兆検知や一度崩壊した生態系の回復のためには具体的にどうすべきかという確たる手法は明らかになっていなかった。

研究グループは今回、生態系の中で特定の種の個体数変化を追跡することで、レジームシフトを予測できる可能性を探った。過去の研究文献と数理モデルを組み合わせ検討したところ、レジームシフトに先駆けていち早く個体数が少なくなる種があることが分かった。

  • 日本各地の湖沼で問題となっているヒシは、レジームシフトにより変化する生態系でも管理できることが示された (出所:京都大学Webサイト)

研究グループは、「今回の知見を応用し、環境を再生するためには生物を導入する順序を適切に組み立てることが効果的である」と指摘しており、今後は、環境DNA(水をすくい、その中に含まれるDNAを解析することにより、そこに生息する生物の種類を網羅的に調べる手法)などのモニタリング技術と組み合わせ、より正確な予測を実現したいとコメントしている。