2017年秋から冬にかけてWindows Mixed Reality(以下、MR: 複合現実)デバイスが日本国内でも発売となった。筆者は当初、Windows MRデバイスの購入を見送るつもりだった。

何故かというと、発表会ベンダーから借用して、Windows MRデバイスの使い勝手や可能性を確認し、近年始まった老視(老眼)持ちの筆者が、ヘッドセット内部のディスプレイを見続けるのは厳しいと感じていたからである。

だが、2017年末に届いたベンダーのメールマガジンで、Windows MRデバイスの割り引きをうたう文字が見えた。しかも、大手ECサイトよりも安価だった。何をいいたいかというと衝動買いしたのである。

  • クリフハウス

    見慣れた感のあるクリフハウス(崖上民宿)

デバイスが手元に到着して早速セットアップしたところ、軽いトラブルに見舞われた。以前、ベンダーから借用した際は問題なかったものの、新たに再インストールしたWindows 10では、USB回りでエラーが発生した。

その際はIntel製チップセットにぶら下がるUSB 3.0ポートにWindows MRデバイスを接続し直したが、本稿を執筆する際にサポートページを確認したところ、既知の問題としてASMedia製デバイスドライバーが原因のトラブルが明示されていた。

  • ASMedia製ドライバでエラー

    ASMedia製デバイスドライバーを使用している場合、USB回りでエラーが発生する

対応は簡単で「ASMedia USB 3.1 eXtensible Host Controller」で使用するデバイスドライバーを「USB xHCI対応ホストコントローラー」に変更すればよい。

  • ドライバ更新でエラー解消

    デバイスドライバーのプロパティダイアログから、ドライバーを更新することで、「Windows Mixed Reality PC Check」のエラーは消えた

さて、無償のWindows MR用コンテンツは一通り試したものの、慣れてしまうといずれも物足りない。このあたりは今後に期待するとして、今回の本命は「SteamVR」だ。Valveが2015年2月に発表したSteamVR Hardware System上では、多くのVR(仮想現実)コンテンツが展開し、VR体験環境として1日の長(ちょう)がある。

MicrosoftはSteamVRへの対応を早々に表明し、2017年11月にはベータ版として「Windows Mixed Reality for SteamVR」をリリース済みだ。筆者はすでにSteamはインストールしていたので、SteamVRとWindows Mixed Reality for SteamVRをインストールすれば利用可能になった。

  • SteamVR Perfomance Test

    別途インストールした「SteamVR Perfomance Test」。Windows Mixed Reality PC Checkと同じくPCのパフォーマンスをチェックできる

  • テスト結果

    こちらはテスト結果。準備OKとしながらも全体的な仮想体験はあまり高くなかった

後はSteamから対応コンテンツを入手するだけ。しかし、ValveとHTCが共同開発した「Vive」に加えて、Oculusの「Rift」に対応するコンテンツは2,500を超えるが、Windows MRに対応するタイトルは10分の1に留まる。

筆者の勉強不足も大きいが、あまり目にしたことのないタイトルが並び、VRコンテンツの本命だった「Fallout 4 VR」はHTC Viveが必要条件のため、リストに現れない。

それでも通常の動画ファイルも360度視野に展開して視聴する「Steam 360 Video Player」や、アバターを通じたチャットは1度体験すべきだと感じた。

  • プレイ可能なタイトルは200程度

    対応カテゴリとして<Windows Mixed Reality>にチェックを入れると、プレイ可能なタイトルは200程度となる

ただし、Windows MRモーションコントローラーをそのまま使用するのは少々厳しい。例えば椅子に座った状態でVR空間を楽しむ場合、サムスティックを左右に動かして視点変更を行うか、前に倒してテレポートするのが通例だが、SteamVRでは左右の視点変更が動作しない。

困り果てたところMicrosoftの公式ドキュメントに解決方法があった。

あらかじめSteamVRを終了させてから、「~steamapps\common\MixedRealityVRDriver\resources\settings」フォルダ(パスは環境によって異なる)の「default.vrsettings」を編集すればよい。

右手のモーションコントローラーなら「thumbstickTurnRightEnabled」、左でのモーションコントローラーなら「thumbstickTurnLeftEnabled」の値を「true」に変更する。さらにスムーズな移動を実現するため、「thumbstickTurnSmooth」の値を「true」に変更してSteamVRを起動する。これでクリフハウスと同じ感覚でSteamVRホーム内を動き回れるようになった。

  • サムスティックで視点変更が可能に

    「default.vrsettings」ファイルを開き、「thumbstickTurnRightEnabled」と「thumbstickTurnSmooth」の値を「true」に変更する

  • サムスティックで視点変更が可能に

    これで右手のモーションコントローラーにあるサムスティックを左右に動かすことで、視点を変更できる

繰り返しになってしまうが、Windows MRがSteamVRをサポートしても、まだキラーコンテンツと呼べるタイトルは見当たらない。ただ、PCゲームの進化過程を踏まえると、臨場感を高める演出としてVRを採用するタイトルは増えていくのは明らかだ。

おそらく今回購入したWindows MRデバイスの出番は多くないが、無駄遣いとは考えていない。Windows MRプラットフォームに「The Elder Scrolls V: Skyrim VR」が移植される保証はないが、今後もゲームメーカーが多くのヘッドセットをサポートして市場拡大を図ると考えられるからだ。

ただ、現時点でWindows MRデバイスの購入を迷っている方は、自身がプレイしたいVRコンテンツが登場するまで待っても遅くないだろう。

阿久津良和(Cactus)