Willard Tu氏

説明を行ったXilinx Sr. Director,Automotive MarketのWillard Tu氏

Xilinxは1月16日、セーフティクリティカルな先進運転支援システム(ADAS)および自動運転システムの実用化に向けて、AEC-Q100試験規格への準拠が認定されているほか、ISO26262 ASIL-Cレベルに完全に適合する16nm FinFETプロセス採用のオートモーティブ(XA)グレード「Zynq UltraScale+ MPSoCファミリ」の供給を開始したことを明らかにした。

同社Sr. Director,Automotive Marketを務めるWillard Tu氏は、自社の自動車向けビジネスの概況を振り返り、「ADAS向けには、2013年には9メーカー13車種が我々の製品を採用したに過ぎなかったが、2017年には26メーカー96車種まで拡大。2018年は30メーカー100車種以上を目指すまでに成長してきている」と、これまでに累計4000万ユニット以上の出荷を達成していることを強調。中でもフロントカメラモジュール市場では、日本や欧州のメジャーなTier 1にも採用され、2017年には中国Teir 1にも採用され、年間でも470万ユニットを出荷するなど、シェアを急速に高めており、首位に肉薄するほどまでに成長してきたとする。

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  • Xilinxの製品をADAS向けに採用した自動車メーカーと車種数の変遷。毎年その数は増加し、ほぼ同社の製品を採用していない自動車メーカーはいない状況になってきた。特に近年はフロントカメラモジュール向けに採用が増加しており、シェアもトップに肉薄するまでに上昇してきたという

こうした成長の背景には、クルマに搭載されるセンサの数が増加傾向にあり、そこで得られたデータを処理する必要性も増してきていることが挙げられる。「特に自動運転(AD)の分野での採用が増加傾向にある」とのことで、カメラ、センサ、LiDARのすべての分野において同社製品の活用が進んでいるとする。

「センサの分野では、最終的には自動車(OEM)メーカーの要望で、OTA(Over the Air)でのアップデートに対応する必要が生じている。仮に、こうしたニーズに機能が固定されたASICなどで対応しようと思った場合、ソフトウェアアップデートがメインで、ハードウェアの交換は難しい。しかし、All Programmable製品であれば、ハードウェアのアップデートもOTAで行うことができるようになる。OEMやTeir 1は市場の変化に柔軟に対応したいというニーズがあり、それが可能な我々に興味を持ってもらっている」(同)とするほか、自動運転分野では、センサフュージョンで複数のセンサから得られたデータを処理し、それと地図情報などを、自動運転のコントロールユニットで組み合わせて処理し、実際の自動車の位置や状態などを把握して、運転を行っていくが、自動運転そのものが、これまでに無かったアプリケーションであるため、OEMやTeir 1であっても、将来にわたる性能の向上や技術トレンドの変化が簡単に予測できないという課題があり、やはり柔軟に対応を図りたいというニーズが強いという。

  • 自動運転におけるデータ処理の流れ

    自動運転におけるデータ処理の流れ。車種ごとに搭載されるセンサの種類や数が異なるため、開発の複雑さは、従来のADASと比べても100倍以上となると同社では見ている

具体的なシステムとして考えた場合、センサ情報を処理する「Data Aggregation Pre-processing and Distribution Device(DAPD)」を経て、ディープラーニングを活用した推論を行う「Compute Accelerator」で実際に処理が行われるわけだが、DAPDには、車種ごとにどんなセンサがどの程度接続されるかが異なっており、それを機能が固定されたハードウェアでシステムパフォーマンスのチューニングを図ろうとすると、いろいろと課題が出てくることとなる。さらに、ディープラーニングの推論向けにも、いろいろなデバイスが提供されるようになってきたが、「推論の方法としても、思想の違いにより、事前に処理を施したものを処理する方法や、センサからの情報をそのままの状態で流す方法など、複数考えられる。そうした思想の違いにも対応できるのが我々の製品」とし、冷却ファンなどを必要としない低消費電力を含め、自社の優位性をアピールした。

  • 自動運転における中央処理モジュールには、DAPD、推論用アクセラレータ、セーフティプロセッサ、高性能シリアルプロセッサが基本的に求められる

    自動運転における中央処理モジュールには、DAPD、推論用アクセラレータ、セーフティプロセッサ、高性能シリアルプロセッサが基本的に求められるが、Zynq UltraScale+ MPSoCであれば、この内のDAPDとアクセラレータを1チップで提供することが可能となる。これができると、何が強いのか、というと、1つはモジュールとしての低消費電力に貢献できるという点。もう1つはチップ間のIOが必要なくなるので、レイテンシを抑えることができ、かつPMICなどの周辺回路も減らせるので、コストも減らせるというメリットも享受できる

Sam Rogan社長

同席した日本法人社長のSam Rogan氏。同氏によると、日本地域では、OEM各社はすでに自動運転に向けた取り組みを進めていたが、周辺ハードウェアメーカーなどがようやくこの1年でアクセルを踏み始めたとのことで、今後、開発の加速が期待できる状況になっていくだろうとのことであった

例えば現在、LiDARを提供するメーカーは30社程度あるが、「1社を除いて、我々の製品が採用されている」(同)という。これは、LiDARには、大きく「ミラー回転方式」、「MEMS方式」、「フラッシュ方式」、「周波数変調方式」といった4つの方式が存在するが、そのいずれにも柔軟に対応できるためであるという。

また、今回提供を開始したZynq UltraScale+ MPSoCファミリでは、64ビット クワッドコアARM Cortex-A53およびデュアルコアARM Cortex-Rをベースとするヘテロジニアス構成でのASIL-C対応を実現しており、「他社の多くはホモニジアス構成でのASIL-C対応ということを考えれば、大きな特徴といえる」(同)とする。

なお、同社は1月17日より東京ビッグサイトにて開催される「オートモーティブワールド2018」において、Zynq UltraScale+ MPSoCを用いた自動駐車向けストラクチャ フロム モーションを用いた3Dマッピングや、AvnetとOKIアイディエスが共同で開発したZynq UltraScale+ MPSoCを2個搭載した自動運転開発ボード「UltraZ AD」のデモなどを紹介するとしている。

  • オートモーティブワールド2018の出展概要

    オートモーティブワールド2018で展示されるADAS/自動運転ソリューションの概要