超小型衛星の民間ビジネスが拡大

近年、民間による超小型衛星の開発が盛んになってきている。

2018年で、まず注目したいのはアクセルスペースの「GRUS」だ。同社は衛星50機を使って地球を高頻度に観測する「AxelGlobe」の構築を目指している。GRUSはそのための観測衛星で、2018年内に最初の3機を打ち上げ、観測地域を限定したサービスの提供を開始。その後、2020年までに10機以上、2022年に全50機による観測網を完成させる。

  • AxelGlobeのイメージ動画

GRUSの大きさは60cm×60cm×80cm、重さは100kg。大型衛星は高分解能の観測ができる反面、コストが数100億円と高い。一方、超小型衛星は1機あたり数億円と安いので、同じ費用であればよりたくさんの衛星を軌道に投入し、観測頻度を上げることができる。AxelGlobeが完成すれば、画像を毎日更新していくことが可能になるそうだ。

・参考記事:アクセルスペース、50機による衛星観測網「AxelGlobe」で全球毎日観測へ

コストが安くなると、新しい用途も生まれやすくなる。宇宙をエンターテイメントに活用しようというのが、ALEの人工流れ星衛星である。普通、流れ星はなかなか見ることができないが、人工的に作れるのであれば、時間と場所を決めて、みんなで鑑賞できるようになる。つまり、花火のようなノリで流れ星を楽しめるというわけだ。

この技術実証機がJAXAの「革新的衛星技術実証プログラム」に採択されており、2018年度にイプシロンロケットで打ち上げられる予定。衛星についてあまり公開されている情報はないが、衛星バスは東北大学の技術がベースとなる模様だ。

ALE

次世代に向けた技術開発が進む

2020年度の初飛行を目指して開発が進められているJAXAの新型基幹ロケット「H3」。打ち上げまではあと2年ほどあり、現在はLE-9エンジン単体の燃焼試験が順調に行われているところだが、2018年度には、重要なマイルストーンとなる「厚肉タンクステージ燃焼試験」(BFT)が実施される予定だ。

・参考記事:姿を現した次世代の大型ロケットエンジン「LE-9」

BFTは、ロケットの第1段をまるごと模擬して行う燃焼試験。エンジンは3台をクラスタ化するそうなので、かなりの迫力になるだろう。JAXAはH-IIBロケットで2台のクラスタ化の経験はあるが、3台は初。BFTを無事クリアできれば、H3ロケットの完成に向けて大きな前進となるはずだ。

  • 2008年に実施されたH-IIBロケットのBFT

    2008年に実施されたH-IIBロケットのBFT。今回も三菱重工業の田代試験場で実施される予定だ

また2018年度に打ち上げが予定されている宇宙ステーション補給機「こうのとり」(HTV)の7号機で注目したいのは、搭載される小型回収カプセルである。このカプセルの直径は84cm、高さは65cmほど。帰還時にHTVから分離し、揚力飛行で進行方向を制御しつつ、南鳥島周辺海域に着水することが検討されている。

  • 筑波宇宙センターの特別公開で展示されていた小型回収カプセルの模型

    筑波宇宙センターの特別公開で展示されていた小型回収カプセルの模型。両手で抱えられる程度の大きさだ

現在、国際宇宙ステーションから実験サンプルを地上に持ち帰るには、ソユーズやドラゴンなど、他国の宇宙船を使うしか方法がない。この小型回収カプセルは、日本独自の回収手段を確保するために計画されたもので、今回が初の実証飛行となる。無事に日本近海まで戻ってくることができるのか、注目したいところだ。

ちなみにHTVは9号機で終了する予定であるため、HTVを搭載するH-IIBロケットの打ち上げも残り3回となりそうだ。まだ種子島でH-IIBロケットの打ち上げを見たことが無い人は、今のうちに見に行ってはいかがだろうか。

  • H-IIBロケット初号機

    H-IIBロケット初号機。筆者は初号機と3号機の打ち上げを見に行ったが、残念ながらどちらも雲ズボ