瀬口氏のキャリアはまだまだ続く。クラブメッドのあとはサザビーズジャパンの代表取締役社長となる。サザビーズは、美術品を中心としたオークション運営企業で、18世紀に設立された老舗だ。ルノワール作の「ムーラン・ド・ラ・ギャレットの舞踏会」という絵画を、バブル期に119億円で日本人が落札したことで大きなニュースになった。サザビーズジャパンは、そのオークション企業の日本法人だ。そしてその後、現在の日本ヒルズ・コルゲートのトップとなる。

つまり、酒類からリゾート、オークション、ペットフードと、まったく異なる業界をわたり歩いてきたのだ。前出の原田氏に劣らない業界バリエーションだ。

  • 日本ヒルズ・コルゲートは、犬や猫のウェルネスを考慮したペットフードを得意とする

人を育ててこそ経営者

だが、疑問も残る。これほど多様な業界をわたり歩いて、順応できるものなのだろうか。瀬口氏は「経営者の仕事は組織づくり。8割は組織作りに労力を使い、専門知識の習得は2割ほど」と話す。また、組織をつくるということは、人を育てるということと強調する。人を育てるということに関しては、業界は関係ないとも力強く語った。

ただ、これほど多様な業界をわたり歩いているのは、瀬口氏の性格にも起因していそうだ。「同じ業界の企業に移っても面白くない。異なる業界だからこそ新たな刺激になる」(瀬口氏)という。まったく違う客層に接せられることが、楽しみなのだそうだ。

また、自分が日本人であることも強みだという。前述のとおり、瀬口氏はグローバル企業のトップとして活躍してきた。ただ、日本法人となると特殊で、日本ならではの商習慣が存在する。瀬口氏は、グローバル企業の常識と、日本ならではの商習慣を理解している。そうしたスキルがあるからこそ、さまざまな企業のトップに招聘されるのかもしれない。

今後の瀬口氏の活躍に期待したい。