宇宙航空研究開発機構(JAXA)は12月14日、小惑星探査機「はやぶさ2」に関する記者会見を開催、近況について説明した。地球を出発してから3年が経過したが、航行は順調で、小惑星到着に備えた検討や訓練が本格化している。2018年1月より、3回目のイオンエンジン連続運転を行い、リュウグウには同6月21日~7月5日ころ到着する予定。
打ち上げから3年が経過した「はやぶさ2」
前回の記者会見(7月)以降のアップデートであるが、探査機側について、あまり大きな動きはない。2回目のイオンエンジン連続運転は4月26日に終了しており、現在は引き続き慣性飛行を続けているところだ。
はやぶさ2の現在の位置は、地球から約3億500万km。これは電波でも往復に約34分かかる距離になる。リュウグウまでの距離は約560万km。リュウグウの軌道の内側後方より、徐々に接近している。同日、プロジェクトWebサイトのトップページがリニューアルされ、リアルタイムで位置を確認できるようになったので、チェックしてみて欲しい。
なお9月5日には、探査機の時計をリセットする運用が行われたという。時刻のカウンターは32ビットのため、約4年3カ月でオーバーフローしてゼロに戻る。小惑星滞在中にこれが起きると、問題になる可能性があるので、今のうちにリセットしたというわけだ。地球帰還まであと3年ほどなので、これでもう再びリセットする必要は無い。
予想外を想定した検討が進む
一方、地上側では、小惑星への到着に備え、さまざまな取り組みが進んでいる。
はやぶさ初号機は小惑星からのサンプルリターンに世界で初めて成功したとは言え、2回敢行したタッチダウンはいずれも計画通りには実施できていない(1回目は不時着し、2回目は弾丸発射に失敗)。ミッションマネージャの吉川真氏は、「まったく楽観はできない」と気を引き締め、これまでに検討した内容について紹介した。
はやぶさ2で懸念されているのは、探査対象のリュウグウについて、データが不足していることだ。初号機でのイトカワは、事前に地上からのレーダー観測が行われており、自転軸の向きなども分かっていた。しかしリュウグウは地球に十分接近しなかったため、レーダー観測ができなかった。条件としては初号機よりも厳しい。
自転軸の傾きについては、光学観測により、-40°±15°と推定されているものの、確度は高くないため、すでに傾きがより大きい場合を想定した検討を行っているという。吉川氏は、「いろんな場合が想定されるが、最大限のサイエンスデータを得て、探査機が安全に地球に戻ってこられるように運用計画を立てたい」とコメントした。
はやぶさ2は、リュウグウで3回のタッチダウン(TD1~3)を行う予定だが、この回数は状況によって変化する。TD1に成功し、TD2が予定通りできなかった場合、進捗によっては、TD2はキャンセルして衝突装置の運用に移る可能性がある。またTD3が予定通りできなかった場合、再度挑戦せず帰還することもある。