数あるIT業界系イベントのなかでも、師走の訪れを感じさせるのが、一太郎およびATOKの発表会である。ジャストシステムは2017年12月5日に、「一太郎2018」を2018年2月9日、「ATOK for Windows」を2018年2月1日から提供開始することを明らかにした。

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    最新の「ATOK」「一太郎2018」

お気付きかもしれないが、ATOKは、製品名にその年を示す数字がない。これはジャストシステムがATOKのパッケージ販売を「ATOK 2017」で継続しつつ、最新版は月額286円(税別)の「ATOK Passport [ベーシック]」、月額476円(税別)の「ATOK Passport [プレミアム]」に統一したからだ。

Windows・macOS・Androidデバイスを対象に、最大10台までATOKをインストールできるATOK Passportは、2013年2月に開始したサービス。多くのITサービスがサブスクリプション型へ移行するのに伴い、ATOKもパッケージビジネスを終了する。ジャストシステムは「短期間でディープコアエンジンを強化し、利用者に提供するためサブスクリプション形式を採用」(ジャストシステム CPS事業部 事業部長 田食雅行氏)したと説明。なお、法人向けとなる「ATOK Pro for Windows」「ATOK Medical for Windows」は、従来どおりライセンス契約を継続する。

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    ジャストシステム CPS事業部 事業部長 田食雅行氏

少々分かりにくいのが、一太郎2018と最新版ATOKの関係性だ。ATOK Passportは新機能を随時公開し、年数回のアップデートを行っているが、一太郎2018は2018年2月時点で最新のATOKを搭載する。一太郎2018に含まれるATOKには、機能的なアップデートは提供されない(セキュリティアップデートは提供する予定)。つまり、最新版のATOKを使い続けるには、従来のとおり「一太郎最新版を買っていればOK」ではなく、ATOKに対する単独契約が必要となったのだ。

その最新版ATOKでは、「ATOKディープコレクト」という機能を搭載している。

これまでも、深層学習を利用した「ATOKディープコアエンジン」で文節区切りや同音語選択の間違いを正してきた。さらにキータイプミスなどによる誤変換を修正する機能も備えてきたが、最新版では入力ミスを自動修復するATOKディープコレクトで「入力ストレスを限りなく減らす」(ジャストシステム CPS事業部 開発部 エキスパート 下岡美由紀氏)ことに成功。ジャストシステムがATOKディープコレクトの有無で修復率を調査したところ、35%の向上を確認したという。

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    ジャストシステム CPS事業部 開発部 エキスパート 下岡美由紀氏

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    「ATOKディープコレクト」の概要。入力ミスを検出し、自動修復を行う。不用な場合は「Shift」+「BackSpace」キーで解除し、以降は自動修復を行わない

内部的には予測判断機能を利用し、タイプミスと判断した部分を検出した上で自動修正を行っている。もちろん不用な修正はキャンセルも可能だ。ATOKディープコレクトについては、「自身の入力がどれだけATOKに頼っているかを実感した。タイプミスはATOKに任せてほしい」(下岡氏)と自信を見せる。なお、本機能はWindows版を対象にしており、macOS版とAndroid版での実現は検討中とのことだ。

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    内部的には、予測判断で入力ミスであろう部分を検知して、自動修復している。「ATOKディープコアエンジン」と「ATOKディープコレクト」の両輪でストレス軽減を目指すという

ベーシック版とプレミアム版の相違点だが、ベーシック版は入力文字数やタイプミスの傾向をローカル側で分析して可視化する「ATOKマンスリーレポート」、従来はWindows・macOSで登録した単語をAndroidが受け取るだけだったが、双方向同期を実現した「ATOKクラウドサービス」、ATOKをインストールしたデバイスのリストアップやダウンロード先へのナビゲーションを行う「ATOK My Passport」(ユーザーサイト)を提供する。

プレミアム版では、2018年1月に刊行する「広辞苑 第七版」の電子辞典を含めた計6冊のATOKクラウド辞典、8カ国語クラウド翻訳変換(Windows・macOS)、ATOKクラウド文章校正サービス、「ATOK for Android [Professional]」を含む。ATOK利用者であれば気になるであろう、専門用語辞書や自身が育ててきた独自辞書、電子辞典の扱いだが、サブスクリプション版でもそのまま利用可能だ。新環境でATOK Passportを利用する場合は別途インストールすればよい。

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    キータイプの効率やタイプミスの傾向、入力した文章の内容などをローカルで分析する「ATOKマンスリーレポート」。「リフレッシュナビ」を進化させた内容だ

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    6冊のATOKクラウド辞典。ちなみにローカル版の「広辞苑 第七版 for ATOK」は2018年2月9日から8,800円(税別)でダウンロード販売を行う

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    ATOK Passport経由でATOKをインストールしたデバイスの状況を管理する「ATOK My Passport」

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    「ATOK Passport [ベーシック]」「ATOK Passport [プレミアム]」の提供機能