富士通研究所は12月4日、低消費電力で広い領域を対象にできる無線通信技術である「LPWA(Low Power Wide Area)」に対応した、電池交換不要の小型センサデバイスを開発したことを発表した。

同社はこれまで、IoTシステムの本格的な普及に向け、太陽電池のみの電力でビーコンを動作させる電源制御技術を開発していたが、同技術は、温度による太陽電池の発電電力のバラつきに対して、蓄電素子を大きくして対応する必要があった。今回、同社は、温度センサによって取得した温度データを元に、LPWA無線の電波送信のタイミングをリアルタイムに制御する電源制御技術を開発。これにより、LPWA無線の動作下限電圧を下回らないように、温度によって異なる起動電圧が最大となるタイミングで電波送信を行うことができるようになったため、効率的な電力利用により温度による無線回路の消費電力と太陽電池の発電電力のバラつきを許容することが可能になったという。これにより、従来必要だった電源変動へ対応するための余分な蓄電素子が不要になり、最小限の蓄電素子の構成により、センサデバイスの小型化が可能となったとする。

また、温度データを取得するためには、電源電圧の変動が生じても小さな電力で温度センサを確実に起動し続ける必要があることから、電源電圧の変動を分析し、温度センサの動作可能な電力が蓄電されているか否かを簡単な回路で正確に判別する電源監視技術も開発したとのことで、これにより温度に合わせた最低限の電力で温度センサの不要な動作停止を防ぐことができるようになったと同社では説明している。

実際に同社では、今回開発した技術をLPWAの1種であるSigfoxに適用し、電池交換不要でLPWAの通信を実現する82mm×24mm×6mmのセンサデバイスを開発し、10分に1回、7日間の温湿度データを照度4000ルクスの環境下で、約7km先の基地局にダイレクトに送信できることを実証したほか、Sigfoxクラウドに接続できるIoTプラットフォームとしてのSigfox Ready Program for IoT PaaS認定を取得した富士通のIoTデータ活用基盤サービス「FUJITSU Cloud Service K5 IoT Platform」を経由して、データ可視化することも実証したという。

なお、富士通研究所では今後、センサデバイスの実用化に向けた実証実験を進め、同技術をFUJITSU Cloud Service K5 IoT Platformや富士通フロンテックのセンサソリューションの接続デバイスとして搭載し、2018年度の製品化を目指すとしているほか、さらにセンサデバイスを小型化する技術開発も継続して進めていくとしている。

  • 富士通研が試作したLPWA対応の小型センサデバイス

    図1 富士通研が試作したLPWA対応の小型センサデバイス

  • 今回開発されたLPWAセンサデバイスとクラウド経由での利用シーン・データの流れ

    図2 今回開発されたLPWAセンサデバイスとクラウド経由での利用シーン・データの流れ