--:アナログ系の半導体は、用途や仕様により、非常に製品の数が多くなりますから、すべてを覚えることは無理でしょうね

山崎氏:アナログ半導体のすべてを理解することは我々も含めて難しいのは事実です。そのため、特長的なものだけでも理解してもらい、顧客に訴求してもらう。そうした分かりやすい、シンプルな資料を我々で作成し、推奨販売代理店の皆さんに、顧客のところにおいてきてもらう、といった取り組みのほか、顧客の側でもアナログエンジニアはなかなか育たないという課題がありますので、我々のほうで、すぐに使えるリファレンスの提供なども進めていくことを考えています。

--:IoTという言葉の普及に併せて、従来の家電メーカーやIT機器メーカーといったプレーヤーから、新たなプレーヤーが出てきて、なおさらアナログ技術がわからない、という状況になってますしね

山崎氏:家電メーカーやIT機器メーカーの勢いがなくなり、そうしたところにいたエンジニアの多くが新天地を求めて、別の業界に移籍して活躍されています。Googleが自前で半導体を開発する、といった動きは良い例でしょう。しかし、そうした新たなシステムの開発を支えるのは、電源なども含めた共通部分となるアナログ技術であり、機械でできない技術は人間が実現するしかないと感じています。

半導体業界に入って36年が経ちましたが、その中で、いろいろなお付き合いの仕方を経験させてもらい、最後は人と人の付き合い、と最近は思うようになって来ました。確かに、オンラインの世界でクリックすれば注文は終わったり、AIを活用すれば、勝手に考えてくれたりもしますが、机を囲んで、一緒に何かを誰かと生み出していく、という行動が、これからは返って重要になってくるのではないかと思っています。

そういった意味では、オンライン代理店とも、付き合いを深めようと思うと、オンラインの先には、代理店の人間が存在し、そういった人たちと、次はどういった仕掛けを構築しましょう、といった話をすることになります。

--:結局は人ありき、という、ハイテク企業らしからぬ話になってますね

山崎氏:顧客に聞かれたことを答えるだけのFAEは今後、通用しないと思ってます。顧客が本当に困っているのは、こういうところで、それを解決するためには、こうした方法がありますよ、と言えるように推測して提案する、つまり、気づきを親切丁寧に提供できる人になる必要がある。そういう人と人のやりとりが日本市場の面白いところでもあると思いますね。

顧客が気づいていないところまで、マキシムが気づきを提供できるようになれば、それが新たなマキシムの価値になるのではないかと思います。ただ、これは一足飛びにはできません。ですので、地道に一歩ずつ、歩を進めていくしかないかな、と思っています。

--:気づき、という意味では、実はマキシムの製品は日本製が多いこともあまり知られてないですよね

山崎氏:多分、そうなんだろうと思います。実は、セイコーエプソンの酒田工場に、我々のプロセスを導入してもらい、製品の製造を担当してもらっていたりします。

これは、オレゴンのファブと同じものがエプソンでも作れる、という意味で、BCPの観点やデリバリの観点でも、日本の顧客に向けた安心の提供につながると思っています。

Maximの生産拠点と、パートナーファブの位置関係 (資料提供:マキシム・ジャパン)

こうした外部パートナーのファブ活用は2017年時点で75%程度まで拡大していますが、そうした外部パートナーのファブにも、我々のプロセスを導入してもらって、それによるキャパシティの確保と品質の担保、そしてコストの削減を実現しています。こうした製造パートナー各社とは技術的交流も含め、良い関係を構築できていますので、フレキシブルな拡張を実現することができています。

2012年と2017年の生産拠点別の生産比率と、採用プロセスの比率。年を追うごとに外部委託が増加しているが、自社プロセスの比率は高いままを維持している (資料提供:マキシム・ジャパン)