2017年11月2日、富士通のPC事業を担当する富士通クライアントコンピューティングに対して、レノボが出資し、合弁事業をスタートすることが正式に決定した。
同日、富士通およびレノボグループから発表されたリリースによると、富士通クライアントコンピューティング(FCCL)の株式の51%をレノボに、5%を日本政策投資銀行(DBJ)に対し、2018年度第1四半期をめどに譲渡。FCCLをレノボ、富士通、およびDBJの合弁会社とする。FCCLは社名を継続して使用する。
レノボグループの国内シェアは40%超えに
これにより、国内1位のNECブランドのPC、国内2位の富士通ブランドのPCが、いずれもレノボ傘下のなかで事業運営が行われることになる。レノボグループの国内シェアは40%を超え、社内目標として掲げてきた50%突破も視野に置くことができるようになる。1社で国内シェア50%を突破するのは、かつて、1990年代前半に、NECがPC-9800シリーズで圧倒的シェアを獲得していた時期にまで遡る。
レノボは、2004年にIBMのPC事業を買収。さらに2011年には、NECのPC事業を買収。同様にドイツでは、PCメーカーのメディオンを買収するなど、PC事業を拡大してきた経緯がある。また、スマホ事業では、モトローラ・モビリティを、サーバー事業ではIBMの事業を買収し、それぞれの市場で地盤を築こうとしている。
一方、富士通は、2016年10月27日に、「富士通およびレノボによるPC事業における戦略的提携の検討」(該当PDF)と題するリリースを発表。その後、富士通の田中達也社長や塚野英博副社長が、決算会見などで、2016年度内の契約完了を示唆していたほか、その後も「交渉が最終段階に入っている」という表現を使いながら、「早晩まとまると考えている」、「時期は、そんなに遅くならない」などの発言を繰り返してきた。だが、一向に話し合いがまとまらない状況が続き、結果として、リリース発表から1年を経過することになった。
2017年10月26日に、富士通本社で行われた2017年度上期業績発表の席上、富士通の塚野副社長は、「交渉の過程という意味では、アディショナルタイムに入っている段階」と独特の言い回しで表現。「少なくとも、日本では勤労感謝の日、米国ではサンクスギビングデー(感謝祭)は、ゆっくりと過ごしたいというイメージで物事を考えている」とコメントした。
日本の勤労感謝の日と米国の感謝祭は、いずれも11月23日となっており、11月中旬までには交渉がまとまり、正式発表が行われるとの見方が広がっていた。
ちなみに、この日の決算会見場には、塚野副社長の意向によって、PCやスマホが展示された。これまでにはない措置だっただけに、逆に、交渉がまとまる段階に入ってきたことを予感させるものになった。
富士通クライアントコンピューティングでは、11月1日夕方に幹部社員に対して説明を行い、11月2日午前中に、社員に対しても説明を行った模様だ。