10年という歳月をかけて確かな関係を築いた上林春松本店と日本コカ・コーラ。10年という期間は、ブランドの定着とともに新たな挑戦が難しくなる時期でもある。
「緑茶市場は依然として成長しているものの、無糖茶やブレンド茶などに比べるとややスローダウンしている。綾鷹というブランドからのニュース発信を考えなくてはならないタイミングでしたし、綾鷹のDNAである『急須で入れた緑茶の味わい』をいま一度表現したかった。常に伝統と革新を模索する、それが綾鷹なんです」(日本コカ・コーラ 吉田氏)
そこで構想したのが通常の綾鷹の上を行く、ハイグレードな「珠玉の深み」。「ベースバリューを維持しつつも、究極の急須で入れた緑茶の味わいとは何かという議論を3年に渡ってやってきた」(吉田氏)。上林氏と吉田氏のみならず、製品開発チームやブランドチームが一体となって茶葉の選定から火入れ、温度管理などを議論した結果、採用したものが「玉露」だった。
玉露は日光を遮るカーテンのような布を被せる「覆下栽培」で作られる茶葉。日に当たらないため生産量は少ないものの、旨味や甘みを引き出せることから緑茶好きに支持されるものだという。
緑茶で主に味選定のベースとなるのは「苦味」。苦みの強さ、弱さを大別すると、およそ半数が「程よい苦み」を求め、残る25%が強い苦み、もう25%が弱い苦みを求める。綾鷹は2016年3月に「綾鷹 にごりほのか」を発売しており、弱い苦みへのアプローチは終えていた。
「強い苦味を求める層は、それなりの『緑茶通』だと考えています。緑茶に対する理解の深さ、何よりこのセグメントこそがプレミアムであり、実は市場がまだ確立していません。通常の製品(290mlボトル缶)よりも10円高い製品ではありますが、そのこだわりをわかっていただける層だと考えています」(吉田氏)
にごりほのかが女性ユーザーをターゲットに据えるのに対し、30~40代男性がメインターゲットの珠玉の深み。苦みを好む層が集中していることもあるが、一方で「苦味ありきではない」と吉田氏らは強調する。
「25%が強い苦みを求めていると言っても、苦みに振り切った製品は満足していただけるかというとそれは難しい。バランスを大切にしなければならないのが、開発する上で難しいところでした」(上林氏)
「玉露を追加して終わりではなく、すべてをレベルアップさせることに力を入れました。苦みに特化した製品は競合他社にもありますし、綾鷹としてあえてそこに製品を当てる必要はない。苦みを好む層が緑茶通と話しましたが、通に満足していただくには『苦み』に加えて『渋み』『旨み』をトータルに高める必要があるんです」(吉田氏)