デュアルDACの威力と2.5mm/バランスの充実
AK70 MKIIの見どころ・聴きどころは、デュアルDAC化と高出力化による音の変化だ。DAC (Cirrus Logic CS4398)のキャラクターを乗りこなす術は、AK240および前代AK70で練り上げられているだろうことからすると、いかにしてエントリーモデルでそれを再現するかという課題も見えてくる。
試聴には密閉型イヤホン「AZLA」を使用し、2.5mm/バランス接続を中心に実施した。AZLAには標準で3.5mm/アンバランスケーブルが付属するが、先日発売開始された交換用2.5mm/4極バランスケーブル「AZLA Silver Galaxy Mix+ 2.5mm Balanced」を利用しようというわけだ。
まず、一聴してチャンネルセパレーションの改善に気付く。デュアルDAC化によりL/Rチャンネルのクロストークが低減したのだろう、AZLAの持ち味である位相特性のよさが際立つようだ。一方でAsterll&Kernらしい緻密かつ繊細なサウンドキャラクタは健在、それがくっきりした定位と見通しのいい音場につながっている。
量感の豊かさも印象的。高出力化による余裕がなせる技なのだろう、ヌケのよさを思わせつつも特に低域のドライブ感が心に残る。デュアルDAC化の影響もあるのだろうが、音の傾向としてはAK70よりAK240に近く、歪み感のなさはSP1000をも窺うレベルだ。その余裕は、2.5mm/バランス接続のみならず3.5mm/アンバランス接続でも強く実感した。
惜しむらくは、ネイティブ再生が192kHz/24bitまでということ。それ以上の音源はダウンコンバートされ、DSDはPCM変換となる。この部分はAK JrおよびAK70と同様であり、エントリーモデルゆえの仕様だが、所有している音源の大半が192kHz/24bit以下というのならば、気にならない部分ともいえる。
このように、エントリーモデルを標榜しつつもかつてのフラッグシップモデルを凌駕するパフォーマンスを見せる「AK70 MKII」。カラーリングもノワール・ブラックとなり質感が向上、風格さえ感じさせるほどだ。価格は直販サイト「アキハバラe市場」で税込79,980円。AK70の税込69,980円より上昇しているが、それに見合うバリューがあるといえるだろう。