宇宙航空研究開発機構(JAXA)は9月14日、平成29年度中の打ち上げを予定している気候変動観測衛星「しきさい(GCOM-C)」の概要説明を実施。併せて開発中の機体を報道陣に公開した。

しきさいの模型と、しきさいの概要説明を行ったJAXA 第一宇宙技術部門 GCOMプロジェクト プロジェクトマネージャの杢野正明氏。会見にはJAXA 第一宇宙技術部門 地球観測研究センター 研究領域主幹の村上浩氏も同席していた

しきさいは、地球規模での気候変動のメカニズム解明のため、地球上の植生や雲・エアロゾルといったさまざまな物理量を全地球規模で継続的に観測するシステムを構築して利用実証するとともに、観測データを気象や漁業などの実利用期間に提供して現業分野に貢献することをミッションとした観測衛星。これを一言で表すと「地球環境の現在を知ることを可能とする衛星」(杢野氏)であり、現在を知ることで、将来の地球環境の予測にその知見を活かす役割を持っている。

しきさいの概要

しきさいの最大の特徴となるのが「多波長光学放射計(SGLI)」で、「可視・近赤外放射計部(SGLI-VNR)」と「赤外走査放射計部(SGLI-IRS)」の2つの放射計により構成される。VNRは可視から近赤外域までの13チャンネルの観測を実施。その内の2チャンネルは偏光観測で使用される。一方のIRSは短波長赤外から熱赤外の6チェンネルを観測を実施し、2つの放射計で合計19チャンネルで地球全域の観測を行う。

観測対象の中で、特にエアロゾルは、陸上においては、地表面反射の影響から、高精度の観測が難しかったが、偏光観測を可能としたことで、誤差を小さくでき、陸上でのエアロゾル特性の推定精度を向上させることが可能となることから、気候変動予測モデルの精度を高めることにつながることが期待されるとしている。

さらに分解能も最大250mまでに向上。走査幅は1150km/1400kmで、約2日間でほぼ全地球を観測することが可能であり、これにより気候変動に関する観測以外の、例えば黄砂の飛来や赤潮の状況把握といった生活に関係した情報の観測も行うことが可能となっている。そのため、すでにJAXAでは気象庁と連携をとり、黄砂予報などでの活用に向けた協議を進めているとしている。

気候変動観測衛星「しきさい(GCOM-C)」

なお、しきさいの詳細や、気候変動予測に向けた世界の動きなどについては、別途、鳥嶋真也氏による詳細なレポートにてお届けする予定だ。

しきさいの公開に併せて公開されたJAXAの1600m3音響試験設備。ロケットの発射時および飛行中のフェアリング中の音響環境を模擬することが可能。出力される音響は最大70kWで、最大音圧は151dB

こちらもしきさいの公開に併せて公開されたJAXAの13mφスペースチャンバ。真空中において、擬似太陽光と極低温環境を模擬して試験を行うことができる。右のU字型の物体は、治具で、ここに固定することで、機体の角度を変えたりすることが可能となる