IFA2017でパナソニックが気を吐いている。初めてのGoogle アシスタント搭載スマートスピーカーを発表したり、ベルリン・フィルと協業する4K/HDR高画質の動画配信サービスをアナウンスしたり。AV機器から白物家電、ロボットまで多彩なブース展示をしている。いまのパナソニックが提案するエレクトロニクスの未来にフォーカスしてみよう。

IFA2017に出展したパナソニックのブース

HDR10+などにも注目

IFA2017では開催前から、AIアシスタントを搭載するスマートスピーカーがブレイクすると期待されていた。フタを開けてみれば、この製品カテゴリでも日本のブランドがとても元気だ。パナソニックは、Google アシスタントを搭載するワイヤレススピーカー「SC-GA10」を発表した。ヨーロッパでの発売は今冬から、英・独・仏を皮切りに始まる予定だ。価格に関するアナウンスはなく、日本への導入も未定とされた。

縦長直方体のエンクロージャには独自に開発した20mmソフトドームトゥイーターを2基とデュアルボイスコイル搭載の8cmウーファーを載せた。出力した音をディフューザーで拡散して、広がりの豊かな音を再生する。本機を携えてプレスカンファレンスの壇上に立った執行役員の小川理子氏も「パナソニックのスマートスピーカーが誇るべき特徴のひとつは“音質”」とアピールした。会場のデモンストレーションスペースは周囲が賑やかで本機の音評価には不向きな場所だったため、日本での発売が実現すれば、機会を改めてレビューしてみたいと思う。

執行役員の小川理子氏がパナソニック初のGoogle アシスタント搭載スピーカー「SC-GA10」をカンファレスで発表した

カラバリはホワイトとブラックの2色

「SC-GA10」の音声コントロールデモ

テレビはヨーロッパでも映像製作のプロフェッショナルから好評を得ている4K有機EL「ビエラ」をメインに展示。プレスカンファレンスでは、パナソニック、サムスン、20世紀FOXの協業で、新しいHDR (ハイ・ダイナミック・レンジ)映像規格「HDR10+」(仮称)を推進していくことを発表した。映像作品のシーン単位でHDRの情報を含む正確なメタデータを参照する仕組みを作って、HDR映像をより高画質に楽しめるテレビや録画機器、コンテンツを拡大していこうとする試みだ。

プレスカンファレンスでは20世紀FOXのエグゼクティブ・バイス・プレジデントであるDanny Kaye氏がスピーチを行い、「新しいHDR10+の技術規格を提供することで、映像を製作する側の思いまで家庭で再現できる環境を育てていきたい」と宣言した。また、実際にパナソニックのブースで、HDR10+の明るく色彩豊かな映像を確認することができた。

有機ELテレビはヨーロッパでも映像制作のプロフェッショナルから高い信頼を得ている

「HDR10+」の高画質映像を見せるデモンストレーション

20世紀FOXのDanny Kaye氏

HDR関連のトピックスとしては、ミラーレス一眼カメラ「LUMIX DC-GH5」がファームウェアアップデートにより、HLG (Hybrid Log Gamma) 方式での4K/HDR撮影機能に対応することも明らかにされた。新しいファームウェアの公開は9月下旬を予定している。

LUMIX GH5がファームウェアのアップデートによってHLG方式の4K/HDR動画撮影に対応する

「透明なOLED TV」のコンセプト展示

パナソニックのHi-Fiブランドである「テクニクス」に関連するトピックスについては先行してお伝えした通りだ]。OTTAVA f (フォルテ)「SC-C70」は、テクニクス製品としては初めて、ベルリン・フィルと音のチューニングを重ねながら開発したオーディオ機器になる。

カジュアルなポータブルオーディオの方面にも注目したい新製品を見つけた。Bluetoothヘッドホンの「RP-HTX80B」だ。レトロな雰囲気が若い音楽ファンの支持を受けて、ロングセラーとなっている「RP-HTX7」の後継機、または発展形として捉えてよさそうだ。ヨーロッパでは12月に99ユーロで発売される予定だという。日本にもファンが多い製品なので、国内導入のアナウンスもあるかもしれない。このほかにもスポーツアパレルの「ミズノ」とコラボレートしたワイヤレスイヤホンも展示されている。

テクニクスの新製品「SC-C70」

レトロなルックスの「RP-HTX80B」

ミズノとのコラボイヤホンも展示

未来のスマートライフを紹介するコンセプト展示も、パナソニックブースの恒例となっている。今年もまたスマートキッチンをテーマに、ディスプレイ付きの「AIステーション」を司令塔として、調理や食材をを一括管理するシステムキッチンの未来像を描いてみせた。本体にレーザースキャナーを搭載し、ロボット掃除機のようにキッチンなど部屋のレイアウトをマッピングし、学習しながら自走できるスマート冷蔵庫のコンセプトも披露。食材を持ってきてくれたり、調理のサポート役を果たすというユニークな発想を盛り込んだ。

ほかにも、パナソニックのロボットへの取り組みとして、文教用途をターゲットにしたロボットも出展。ユーザーと会話したり、本体に搭載するホイールで移動する。言葉を覚えたてぐらいの子どもの拙い発話も正確に認識して、子どもの話し相手になってくれる。球体ボディの底面にはタイヤと重心のバランスを取るためのおもりがあり、子どもに寄り添うように部屋の中を一緒に動き回れるという。一般コンシューマーが来場するイベントに本機が登場するのはこれが初めて。パナソニックのスタッフは「来場者の反響を見て、今後の商品化の計画を煮つめていく」という。

未来の生活を紹介するパナソニックブース恒例のコンセプト展示

キッチンで調理するユーザーに食材を運んだり、仕事をこなす自走式冷蔵庫のプロトタイプ

子どもとの会話が得意なスマートロボットも開発中

このほかにヨーロッパでも好調の理美容機器や白物家電の体験コーナーにも多くの来場者が集まっており、総合家電メーカーとしてのパナソニックのブランドイメージが着実にヨーロッパで浸透しつつあることをうかがわせる展示だった。