NTTコミュニケーションズは都内でプレス向けのミーティングを行い、同社のMVNOサービス「OCNモバイルONE」向けに2種類の新しい音声定額サービスを発表した。長時間の通話が多いユーザーが特に恩恵を被ることができるサービスだ。

上位3番号が自動的に割引対象に

今回発表された音声定額サービスは、いずれも電話番号の前に特定の番号を加える「プレフィクス型通話」によって、安価に通話できるタイプのものだ。スマートフォン上では「OCNでんわ」アプリを使うことで、プレフィクスが自動入力され、相手の電話番号だけで電話をかけられるようになる。

新しい音声定額サービスのうち「トップ3かけ放題」(月額850円)は、通話料の合計が多い上位3つの番号の通話料を0円にするサービス。4位以降の番号については、30秒あたり10円と、通常の半額での通話が可能になる。

このサービスの背景として、NTTコミュニケーションズでサービス企画を担当している高波光洋氏は、まずMVNO全体のトレンドとして、音声機能付きSIMによる1台目需要が拡大しており、通話高利用ユーザーへ需要がシフトしていることを指摘。また、ユーザーの通話利用実態を調査したところ、多くのユーザーは通話相手の上位3箇所に通話全体の約6割が集中していることがわかったという。こうしたニーズに応えるため、お得な通話定額サービスの拡充が必要だと判断したわけだ。

高波氏はNTTコミュニケーションズで長年固定系・モバイル系のボイスサービスを担当されてきた、音声系サービスのエキスパートだ。OCNの音声SIMにも起ち上げから関わってこられた

これまでMVNOが提供するかけ放題プランは5~10分かけ放題、または時間制限のないフルかけ放題に分かれていたが、前者では話したい相手と思う存分長電話ができず、後者はそもそもの料金が高いことに加え、あまり話さない回線にも高額な料金がかかっているのは効率が悪いという短所があった。

MVNOの音声定額サービスは料金とサービス内容のバランスがやや偏っており、ちょうど中間に位置するサービスが空白地帯だった

そこでOCNでは、これらの需要の中間を狙い、「ちょうどいいかけ放題」というコンセプトのもと、効率的な料金を実現するプランとして「トップ3かけ放題」(月額850円)を設立したという。このサービスでは、毎月通話する電話番号の上位3つを無料にし、それ以外の番号への通話は10円/30秒になる。上位3位は最後に料金を確定する段階で決定され、ユーザーが任意に指定することはできない。

「トップ3かけ放題」では毎月の通話を累積し、多いほうから3つの番号への電話料金を無料にする

もうひとつの「かけ放題ダブル」(1,300円/月)は、トップ3と同様に上位3箇所を無料にするほか、その他の通話についても10分までかけ放題になる(10分を超えたぶんは10円/30秒の従量料金となる)。「トップ3かけ放題」と異なる点は、上位3位を決める際に、10分以上の通話で、超過料金の合計が高い上位3位が選ばれるという点。これは、10分を超えないぶんも含めて計算すると、1回だけ長電話してしまった番号があった場合にその番号が上位に入ってしまい、10分を少しだけ何度も超過する番号が漏れてしまう場合があるからだという。いずれにしても、ユーザーにとって最大の割引が適用されるように自動的に計算されるのが両プランのキモとなる部分だ。

こちらは10分のかけ放題を適用したあとに上位3つの番号を算出して無料にする。なお対象になる番号をオプションとして4つ、5つと増やすことも技術的には可能であり、将来検討したいとのこと

従来の「10分かけ放題」と、新たな「トップ3かけ放題」「かけ放題ダブル」はそれぞれどのようなユーザーに向いているか。まず、電話の利用頻度はそこそこ高いが、長電話はほとんどしないという場合は「10分かけ放題」(850円/月)がお得になる。続いて、親・兄弟や友人など、長電話はするが、かける相手がある程度決まっていて3箇所に収められるというひとは「トップ3かけ放題」がいい。長電話も多いが、仕事などで電話を使う機会が多く、相手を3箇所に絞り込めないという電話のヘビーユーザーは「かけ放題ダブル」がベストチョイスだ。

MVNOとキャリアとの契約では、音声通話についてはデータと違ってあまり積極的な格安プランが作りにくいといわれているが、OCNではプレフィクス通話を使ってうまくその縛りを回避している。相手先を気にせず常時最大の割引が得られるというのは、あまり面倒なことを考えずにお得な料金を求めるライトユーザーにとっては、特に安心感が高いだろう。

MVNOも普及期に入り、以前とは異なったユーザー層を抱えるようになってきた。こうした中で各社、サービスや端末など、これまでの低価格とは異なる切り口でユーザーにアピールしだしている。OCNモバイルONEはこれまでもMVNO市場で上位のシェアを確保しているが、今後は新たな定額サービスにより「気軽に電話を楽しめる」ことを武器に荒波のMVNO市場で戦っていくことになる。ユーザー側にこうしたメリットを正しくアピールしていけるか、興味深く見守りたい。