まず、とうふをメインで扱う相模屋食品との連携実証を開始。とうふは賞味期限が短く、生産リードタイムが2日となる。小売業者からは納入の1日前に発注されることが多く、生産に2日間かかるとうふの製造業者は、見込みで生産しなくてはならなくなる。つまり2日前に100丁とうふを用意していても、90丁しかオーダーがなければ10丁のロスが生じる。さらに、天候や気温によって売れ行きが左右されやすい食品でもある。

そこで、日本気象協会の予測情報を小売業者が活用。小売業者が1日前に発注するのは、需要がどのくらいになるのかより正確に見極めたいためだが、日本気象協会の予測情報を使えば精度が上がる。そのぶん、1日前倒しして発注することで、製造業者側のロスを削減できる。2016年には見込み生産だった製造業者の誤差は8%だったが、2017年には0.4%までになった。一方、小売業者側の需要予測誤差も11.6%から9.2%になったという。

そして、この気象情報に人工知能を組み合わせて、さらに需要予測を高度化。天候や気温などから来店客数予測を行い、小売業者の発注精度向上、品出しの強化、適切な人員配置につなげるという。

POSデータと気象データの組み合わせ

また新たなサービス構築にも取り組んでいる。それはPOSデータと気象情報との連係。POSデータは“消費者の購買行動”を可視化できる、企業にとって非常に重要な情報だ。販売実績からの需要予測やマーケティングなどに活用されてきた。そのPOSデータと気象情報を組み合わせることで、より需要予測の精度を上げるというものだ。

「eco✕ロジ」の認定マーク

さらに、「製造」「配送」「販売」分野において、“気象✕データ”により需要予測を行う企業に対し、「eco✕ロジ」導入企業として認定するプロジェクトも開始。ecoはもちろん「ecology」の略、ロジは「ロジスティクス」(流通)のことだ。ねらったのか偶然なのかわからないが、eco✕ロジの「✕」を無視すれば「エコロジ」という発音になる。いかにもエコロジーを連想させるネーミングだ。

さて、日本気象協会といえば、気象衛星による日照量予測を太陽光発電事業者向けに提供するといった、単純な天気情報提供以外の事業を加速させている。今回の商品需要予測事業も、そうしたもののひとつ。前者は再生可能エネルギーの効率化、後者は食品ロスの削減と、メインで扱うのが気象情報だけに、環境問題解決の一助になるものに取り組みやすいのだろう。

最後に、まったくの余談だが、食品ロスを削減するこのサービスが広く普及したら、某テレビ系列の「○腕ダッシュ」の1コーナー、「○円食堂」での食材調達は、ますます苦労するだろうなと、素直に思った。