まず残念なお知らせだが、OLED搭載モデルはおそらく9月中には登場しない。部品調達の遅れが主な理由とされるが、発売目標としては10月、遅くても11月には市場投入されると考える。「12月発売」と分析するアナリストもいるが、2017年のホリデーシーズン商戦を乗り越えるには少なくとも11月上旬には製品が市場投入されている必要があり、Appleとしてはどんなに遅くとも11月初旬には予約受付を完了して出荷を待つだけの状態にしたいと考えるはずだ。たとえ1,000ドル超えで数が出ない製品であっても、最大の商戦期を逃してはビジネス的には失敗となる可能性が高く、当面は品薄が続いたとしても準備ができたロットから市場に優先的に流していくだろう。残りの既存の順当アップグレードの2モデルについては、9月中に出荷が行われる。これは8月1日(米国時間)に開催された同社会計年度で2017年第3四半期(4-6月期)決算においてAppleが「2017年度第4四半期(つまり9月中)」の新型iPhone出荷開始を明言しており、こちらは例年通りスペシャルイベントでの発表から2-3週間以内に世界中での販売がスタートする。
OLEDモデルの出荷遅れの噂は今年の比較的早い時期から聞こえてきており、少なくとも10月にずれ込むことは予想済みだった。それにも関わらずスペシャルイベント9月上旬の例年通りの時期に合わせ、9月下旬などOLEDモデルの登場タイミングに寄せなかったのは、Appleの決算的事情によるものだ。9月中に世界で一斉に販売を開始して第4四半期(7-9月期)決算の業績を引き上げ、さらに続く第1四半期(10-12月期)の業績を最大化するには、9月中に新型iPhoneを投入するしかない。これは市場の投資家らの期待に応えるためでもある。ゆえにイベント日程だけが先に設定され、これに合わせる形で製品出荷計画をすり合わせる形態になっていると予想される。発表から発売までの期間が延びると、購入予定者にとってはモチベーションが下がって購入を止めてしまう危険があるため、Appleとしては可能な限り両者を近付けたいと考えるだろうが、今回のOLEDモデルではどうしてもその流れになりそうだ。それだけiPhoneのAppleに占める比重と、Appleに対する投資家の期待が大きいということの証左でもある。
では、iPhone以外の製品は今回のスペシャルイベントで発表されるのだろうか? おそらく答はイエスだ。「Apple TVがアップデートされる」という噂もあったが、今回iPhoneとともに発表されるのは「LTE内蔵Apple Watch」だといわれている。今回の一連のリーク情報の多くの流出源となったHomePodのファームウェア情報で「LTE対応」の話題が出ており、過去何度か話題に上ったeSIM内蔵Apple Watchの話題が現実味を帯びつつある。これについてはApple情報の報道で知られるBloombergのMark Gurman氏も触れている。ただ、筆者が聞く情報を総合する限り、「LTE版は当初提供地域限定になる」という説がある。理由は不明だが、対応キャリアの問題か、あるいは認証を通すタイミングの問題か、iPhoneほど世界での提供タイミングが統一されていない可能性が高いとみている。Apple Watchに関してもう1つ重要なのが「iPhoneを母艦としなくても動作する」という点で、watchOSのアップデートを経てiPhoneなしでのセルフセットアップが可能になるようだ。これが既存のオリジナルApple WatchとSeries 2にも波及するのか、あるいは新しくリリースされるLTE対応/非対応Apple Watchだけのものとなるのか、合わせて発表会での内容に注目したい。