テレワークは、単純に在宅勤務を認めると宣言したり、サテライトオフィスとして使える場所を用意するだけでは実際に使える形での導入はできない。働く人が不安なく力を発揮するためにも、上司が正しく部下の働きぶりを評価するためにも、下準備が必要だ。

「成功させるためには、業務プロセスの再構築、ICTの活用、細かな部分まで見渡した制度改革、そして意識改革が必要です」と田澤氏は指摘。中でも最も重要なのが、意識改革だろう。制度改革やICTの活用も、しっかりとした意識改革の上で行わなければ意義あるものにならないからだ。

「特に重要なのが、経営層の意識改革です。そう考えると、ベンチャー企業は経営者が決めればやりやすいですね。特に数人から数十人程度の企業ならばコスト面の課題も小さくなります。100~200人規模の企業だとコストが問題になりがちですが、最近伸びてきているクラウドサービスの活用に加えて、国や自治体の助成金を活用するのがおすすめです」と、公的なサポートが充実してきている今こそ取り組むチャンスだという。

かつてテレワークは子育中や介護中の人など、一部の特別な人がやることとされていた。現在は人材不足への対応や生産性向上という別の切り口が注目されているが、仮に子育てや介護に携わる人だけをピックアップするにしても、多くの労働者にとって他人事ではなくなっている。晩婚化が進んでいる今、子育て世代と呼ばれる年代はどんどん高齢になっており、40代で小さな子を抱えている人も少なくない。一方で介護についても、自分が50代のうちに親の介護が具体的に見えてくる人も多いという。

「共働きが当たり前になっている上に、子供が少ないということは一人っ子同士の夫婦ということもあります。男女に関係なく、育児も介護も多くの人にとって自分事なのです。テレワークを他人事にせず、しっかりと我が事として考えてほしいですね」と田澤氏は一部の人のための福利厚生ではなくなったテレワークについて、意識改革を訴えた。