気になる音質と"頭外定位"の効果だが、WiZMUSICの基礎技術「EXOFIELD」には特殊な専用マイクとリスニングルームを利用した個人データの測定が必須ということもあり、聴感できるデモンストレーションは一切なかった。しかし、筆者の場合、しばらく前に首都圏某所で開発段階のEXOFIELDを試用する機会を得ているため、そのときの感想をお伝えしたい。

個人特性の測定サービスの流れ

まず、所定の位置に着座し、耳穴に専用マイクを装着して個人データを測定する。このマイクはかなりデリケートで、わずかな位置のズレが頭外定位に大きく影響するとのこと。気恥ずかしさはあるが、開発者に身(耳)を委ねるしかない。ただし、測定に要した時間はせいぜい数分ほど、片耳だけで数十分を要するカスタムIEMの耳型採取より気楽なことは間違いない。

その後数曲を試聴したが、頭外定位の効果をはっきりと確認できた。リスニングルームに設置された2chのスピーカーの音と、EXOFIELDを利用したヘッドホンの音を聴き比べしたのだが、楽器数が少ない女性ボーカルの曲はスピーカーの音に"かなり近い"。そのリスニングルームの音場感なのだ。発表会では「ヘッドホンで聴いている音場とスピーカーで聞いている音場を入れ替える」(秋山氏)と説明されていたが、言い得て妙だ。ただし、スタジオ収録/ミキシングされた音数の多い曲は効果がやや薄れる印象を受けた。

なお、個人データ測定には多少のコツが必要らしい。同席した他の方は測定時に体を動かしてしまい、マイクがわずかにずれたためか、筆者ほどの効果は感じなかったとのこと。あとで確認したところ、当日は機材の不調で個人差がより大きく生じてしまったとのフィードバックを受けたが、マイクの位置調整やリスニングルームの状態など周囲の環境が大きく影響することは確か。それだけに、「EX Room」で測定した個人データでも聴いてみたいと思ってしまうのだ。

Ex Roomに設置されているPMCのスタジオモニター。各チャンネル専用のパワーアンプで駆動されている