市場動向調査企業である米Gartnerは4月11日(米国時間)、2017年第1四半期のPC出荷台数が、前年同期比で2.4%減となる6220万台(速報値)に留まったと発表した。第1四半期のPC出荷額が6300万台を切るのは2007年以来初めてのことであるという。また、台湾の市場動向調査企業TrendForceも4月11日、2017年第1四半期のグローバルなスマートフォン(スマホ)生産数量が前期比で23%の減少となる3億700万台にとどまったと発表した。クリスマス商戦を含む第4四半期から需要が一服する翌年の第1四半期は例年、季節変動の影響が大きいが、今年はとりわけ中国ブランドのスマホの生産計画が大幅減速となったためと見られている。

PC、スマホともに市場が減速

PC DRAMの価格は2016年半ば以降、値上がりが続いているほか、データセンターサーバのSSD化が予想以上のスピードで進んでおり、NANDフラッシュメモリの供給不足による価格上昇が続いているため、PC価格も値上り傾向にあり、その結果、PCが必須ではないコンシューマユーザーが買い控えをした影響が第1四半期の結果とGaetnerでは見ているが、第2四半期には、その傾向がさらに顕著になるともしている。

ただし、ビジネス分野ではPC需要が高く、LenovoとHPとDellの3大PCサプライヤがビジネスPCで熾烈な競争を繰り広げている。しかし、こうしたビジネスPCで存在感を示せないPCベンダは5年以内にPCビジネスからの撤退を余儀なくされるともGartnerは見ているが、唯一Appleだけは、Macファンという得意客を多数抱えていることもあり例外だともしている。

一方のスマホの減速はSamsung Electronicsをはじめ、LG Electronics、Huaweiなどの主要ブランドがフラッグシップモデルの出荷を開始しているが、多くのコンシューマユーザーが発売から10周年となるiPhoneの次世代モデルが第3四半期に発売されることを見越した買い控えによるもので、販売が見込まれている第3四半期まで、市場の回復感は期待できないとTrendForceでは分析。その結果、第2四半期の世界のスマホ生産数量は、前四半期比で1桁の成長にとどまる見通しとしている。

そんな減速するスマホ市場の中で、唯一生産量を増加させたのはSamsungで、フラッグシップとなる「Galaxy S8」ではなく、ミドルレンジおよびローエンド分野向けの台数が伸びており、中でも「Galaxy Jシリーズ」が全体の出荷数を下支えしているという。また、AppleはiPhoneの第1四半期の生産台数を前四半期比で36%減とし、第2四半期も同17%減の約4300万台にとどまる見通しとのことで、第3四半期の次世代製品の発売に向け、既存モデルの生産を引き下げる可能性が高いという。

PC/スマホの減速を受けても半導体市場は2桁成長の見通し

現在の半導体の主たる応用分野であるPCやスマホが減速している中、調査会社VLSI Researchが第1四半期の半導体市場を2桁成長と発表したほか、年間を通しても2桁成長と予測しているところも多い(GartnerIC Insights)。なぜ、こうしたことが生じているのか。

PCに関して言えば、販売台数が減っても、例えば1台当たりに搭載されるDRAMは、価格が上昇しているということもあるが、従来の4GBから8GB(あるいは16GB)へと容量が増加する傾向にあるほか、NANDに関しても予想を上回る勢いでHDDからSSDへの置き換えが進んでいることもあり(かつ搭載容量も増加している)、実は半導体の消費量自体が減ることがないためである。スマホに関しても同様で、販売台数が減っても、PC同様、1台当たりのDRAMやNANDの搭載容量がPCと同程度(場合によってはそれ以上)に増加していることが背景にあり、それにデータセンターにおけるフラッシュメモリの採用拡大も加わり、世界中でメモリの争奪戦となっている。そのため、メモリ価格の高騰が続いており、これが半導体市場の高い成長率を支える要因となっているといえる。